新たな金の使いみち。【九井一】

第11話 ページ12

「…！！」

7月11日。
発表会で練習のすべてを出し切ったA。
幼くも一生懸命な彼女に、会場の拍手は激しさを増すばかりだった。

*****
「ココ君！！」

「おう、おつかれ。よく頑張ったな。」

「えへへ。」

「A、ちょっと来て！」

「なあに？おばあちゃん。ココ君も行こ。」

Aは一の腕を引っ張って行った。

「あなたに資金援助してくださってる方から、あなた宛にプレゼントよ…！！」

「足長おじさんから…！？」

パタパタと走っていくとそこには可愛らしいピンクのケースが置いてあった。ケースの中を開けるとそこには艶々とした新しいヴァイオリン。

「ヴァイオリンだ…！すごい…！！これ、私に！？」

「え、ええ…」

「やった！！」

壊さないようにそっとケースに戻す。
手紙を見てみると…

”乾Aさんへ。

お誕生日おめでとうございます。
今日の演奏も、とても素敵でしたよ。
最近、調子はどうですか？
今日は顔色が良く、元気そうに見えました。
それでも油断せず、お体に気をつけて。

ささやかですが、あなたに贈り物です。
気に入っていただけましたか？

Happy birthday little lady.

生まれてきてくれてありがとう。
あなたに出会えてよかった。

あなたのファンより。”

「…！！」

Aは嬉しそうに自分の体の丈に合わない大きなケースに入ったヴァイオリンをぎゅっと抱きしめた。

「良かったな、Aちゃん。」

「うん！！」

*****
家に帰ったらね、おばあちゃんがケーキを出してくれたの！
ママとパパとも電話したよー！

「ココ君、ケーキすっごく美味しいね！」

「ああ。そうだ、Aちゃん。」

「なに？」

「これ。はい。今日よく頑張ったな。お誕生日おめでとう。」

「ありがとう…！！可愛い…！！」

白いふわふわのアザラシのぬいぐるみ。そしてその子の頭の上には綺麗な黄色いハイビスカスが乗っている。

「気に入って頂けましたか？お姫さま？」

「すっごく！！！100点満点！ありがとう、ココ君！」

「どういたしまして。」

第12話→←第10話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す