第四十七訓 ページ48
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「こんにちは」
その声に顔を向ければ立っていたのは
「姉御!」
「辞めてちょうだい姉御だなんて」
「すみませんつい」
お妙さんは、はだけた寝巻きから見えた包帯に顔をしかめると
「話は聞きました……」
そう言ったきりそれ以上もそれ以下も聞かない。
「近藤さんがね、真選組は男しかいないからAちゃんの助けになってくれって」
近藤さんが……
「「「きゃああああああああああああああああああぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」」」
その時、廊下から聞こえて来たナース達の黄色い声。
あの人が来るといつもそう……
部屋から顔を覗かせればナースに囲まれる沖田さんの姿。
ベタベタと沖田さんにまとわりつくナースを見て、なんだか胸の辺りがもやもやする……
そんなAの様子にお妙はクスリと一笑。
「Aちゃん、沖田さんの事が好きなのね」
お妙さんの言葉が頭の中でこだまする。
私が?沖田さんを?すき?
「誤魔化したって無駄よ」
「いやいやいやいやそれはないですありえない」
顔の前でぶんぶん手を振って否定する。
「恥ずかしがらなくたっていいじゃない」
「別に恥ずかしがってる訳じゃ」
Aは思いきって尋ねてみることにした。
「誰かを好きになるって、どんな感じですか?」
「……うーん、そうね
その人といると胸が苦しくて、どこか切なくて……
って、何言わすのよこの子ったらもう!」
照れ隠しで私の背中をバシバシ叩くお妙さん。
いてて、ゴリラに叩かれた気分……
「私最近変なんです。
沖田さんといると、ドキドキして胸のあたりが痛くなる」
「Aちゃん、それを恋と呼ばずになんと呼ぶのよ。
堪忍して認めちゃいなさい」
優しく諭すような声でそう言ったお妙さんは「自分の気持ちに嘘ついたらダメ」とつけたしてふわりと柔らかく微笑む。
そっか私、沖田さんが好きなんだ。
そう自覚した途端、恥ずかしさが込み上げてきて、いても立ってもいられなくなったAは勢いよく病室を飛び出した。
「ちょっと走ってきます!」
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作者名:百瀬 | 作成日時:2020年7月11日 0時