第四十四訓 ページ45
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沖田の背後に忍び寄る残党の影。
「くたばれ沖田ああああああああぁぁぁ!!」
「「 総悟……ッ!!」」
刀が振り下ろされた瞬間、沖田に覆い被さるように抱きつくA。
ザン─────ッ
袈裟懸けに斬られた身体がゆっくりと崩れ落ち、沖田の目の前をAの鮮血が舞う……
どくん……
どくん……
どくん……
どくん……
まわりの声が遠くなり、自分の鼓動だけがやたらとデカく聞こえて、憤怒に狂気めいた殺気をはなつ沖田は次の瞬間、目の前で命乞いをする男を一刀のもとに斬り伏せていた。
しかしそれだけでは終わらない。
それだけでこの怒りが収まる訳がない。
「……総悟ッ!!」
近藤さんの声にハッとして我に返った。
Aの亡骸を囲んで涙を流す隊士達。
「バカヤロー……
一人で先に逝ってんじゃねぇ」
───────────Aが死んだ。
なんだこれ……
胸の中にぽかんと穴が空いたような涙さえでない程の悲しみ。
沖田はおぼつかない足取りで歩み寄り、震える手を伸ばす。
「……A」
消えてしまいそうな程に弱々しい声で沖田はぎゅっとAの身体を抱きしめた。
「……ぃだッ!
痛いですそこ沖田さんッ!」
「ッ?!ええぇぇえぇぇぇぇッ?!」
「Aちゃんんん?!」
死んだと思っていたものが蘇ったような驚き。
「……って、あれ、私生きてる……?」
「バカヤロー脅かしやがって!!」
そう言って鼻水を啜る土方さん。
「総悟おおぉぉ!!生きてたッ!Aちゃん生きてたあぁぁぁぁ!!うああああああああぁぁぁ!!良かった……良かったなァ!!」
「冗談じゃねェ……」
そう呟いた沖田からは動揺の色が見え隠れする。
「しっかりしろ総悟、配下がひとり死にかけたくらいで何をそんなに動揺する必要がある」
配下がひとり?
死にかけたくらい?
「土方さんあんた自分が何言ってるかわかってんのか?」
今にも掴みかかりそうな沖田の間に割って入るA。
「私が悪いです、ちゃんと守れないくせにでしゃばりました」
「お前は何も悪くねェだろ、悪いのは……」
俺だ。
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作者名:百瀬 | 作成日時:2020年7月11日 0時