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第四十訓 ページ41

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「これ、昨日の報告書です」

「ん、ご苦労」



部屋を出ようと障子に手をかけると



「おい」



背中にかけられた土方さんの声。

続く言葉を待つかのように見つめれば少し間をあけてから「……大丈夫か?」と一言。



「何がですか?私は大丈夫です」


そう言っていつも通りの笑顔を作れば



「嘘つけ!んな辛気臭ぇ顔しやがって」

「あ、これは……昨日あまり眠れなくて」



バレバレの嘘をつくAに土方は言葉を続ける。



「あれはお前のせいじゃねーんだ、あんま思いつめんなよ」

「……」

「返事」

「……はい」

「よし」



そう言って私の頭をくしゃりと撫でる土方さん。



この人がなんだかんだ優しいのを私は知っている。

それでも私は自分を責めずにはいられない。

私が椿を死なせてしまった……

守りたいと言いながら私は守られてばかりだ。

そんな自分が情けなくて、このやるせない気持ちを何にぶつけたらいいのかわからなくて───────



ポロリ……



何かが目からこぼれ落ちた。

それを見てぎょっとする土方さんを見て私も驚く。



なんで今さら涙なんか……



「すみません……」

「別に謝る事じゃねぇだろう」



一度こぼれた涙はもう歯止めがきかない……

タガが外れたかのように、次から次へと溢れ出す涙。



すると土方さんは涙を拭う私の手を掴み、ぐっと引っ張る。

一瞬で土方さんの匂いに包まれて、抱きしめられているのだと気づくまでに数秒かかった。



「……土方さん?」



あまりの驚きにひっこむ涙。



通り過ぎざまに何となくその部屋を一瞥した沖田は思わず足を止めた。

障子の隙間から見えた光景に、今まで感じた事のないほどの殺意を覚える。



「……何してるんでさァ」



思わず障子を開ければ、Aから離れる土方。



「悪い……」

「……いえ」



二人の間に流れるぎこちない空気。

沖田は乱暴に手をひいてその場からAを連れ去った。



ひとりその場に取り残された土方は重たい溜め息をつく。



「らしくねぇ……」






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作者名:百瀬 | 作成日時:2020年7月11日 0時

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