第二十三訓 ページ24
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───── 次の日の食堂
「Aちゃん、大丈夫だろうか……」
昨日の出来事がトラウマになったのではないかと、屯所内では心配の声が囁かれていた。
「おい総悟、お前ちょっとあいつの様子見に行ってこい」
「何で俺が」
「冷てえな、お前心配じゃねーのかよ」
どいつもこいつも口を開けばAAって……
「私が何か?」
「Aちゃんんんッ?!」
突然の登場に素っ頓狂な声をあげる近藤。
思いの外元気そうなAの姿に一同拍子抜けする。
「もう大丈夫なのかよ」
「昨日の今日で無理しなくても……」
わらわらとAを囲むようにして人が集まる。
「やだな皆、私そんなヤワじゃないですよ」
「心配してくれてありがとう」と微笑んだAの笑顔に、ぽっと頬を染めてちょっとくすぐったい様な顔をする隊士達。
「もともと器量のいい子だったが、笑うと花が咲いたようじゃねーか」
「ったく、締まりのねぇ顔しやがって……」
その光景にかすかな苛立ちに似た思いが腹の底で渦を巻く。
ガタンといきなり立ち上がったかと思いきや、脇目も振らずAのもとへ歩み寄る沖田。
「見廻りの時間でィ」
「ちょ!私まだご飯……!」
Aの首に前から腕をまわし、無理やり連行する沖田はすれ違いざまに隊士達を一瞥する。
まるで、こいつは自分のものだとでも言うかのように……
「総悟が見廻り……」
「雪でも降るんじゃねーか?」
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作者名:百瀬 | 作成日時:2020年7月11日 0時