第十六訓 ページ17
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目が覚めると見知らぬ天井。
「ここどこ……?」
体を起こすと軽い目眩で世界が歪む。
「目が覚めたのね、よかった」
そう言って部屋に入ってきたポニーテールのお姉さん、どこか信頼出来る人のいい笑顔をした人だった。
「あの、ここは……」
「ここはうちの道場よ、神楽ちゃんが血相変えて運んで来た時は本当にびっくりしたわ」
倒れた後の記憶はないが、どうやらここまで神楽ちゃんが運んでくれたらしい。
「たいしたもてなしは出来ないけど好きなだけゆっくりしていってちょうだい」
「ありがとうございます」
この町に来てやっと普通の人に巡り会えた気がする。
「お茶でも入れてくるわ」
お姉さんが部屋から出て行ってすぐ、スパーンッ!と気持ちのいい音をたてて開いた障子。
「A!!」
そこには心配な面持ちをした神楽ちゃんが立っていた。
「死んだかと思ったヨ〜」
「マジで死んじゃう5秒前えぇぇぇぇッ!!」
人間離れした力で抱きしめてくる神楽ちゃんに本気で殺されるかと思った。
「A!ワタシお前のこと気に入ったアル!友達になるヨロシ!」
そんな彼女のいたいけな笑顔を前に、誰が首を横に振れるというのだ。
「よろしくね神楽ちゃん」
新しい土地で友達一号ができました。
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作者名:百瀬 | 作成日時:2020年7月11日 0時