四左 ページ4
一時限目が開始するチャイムが鳴り渡ると、男友達との会話を止めて、彼に向き合うように捻っていた半身を元に戻しつつ鞄から教材等を取り出す。横目に男友達を見れば、少し青ざめていた。私は私で気分が悪くなってしまった。初夏は過ぎて好ましくない陽射しを頭部から浴び、制服は幾度も、首を伝った汗を吸っていると云うのにやたらと寒気がして気味が悪い。
……背後から何者かの視線を感ずる。
自由時間迄、後十数分。一時限目開始直後から其の状態が続いていた。自席は最後尾にあり、確実に級友の視線ではない事は明らかだ。
恐る恐る、首を捻らせる。
「……なぁんだ、何も無いじゃん」
背後には、何も無かった。安堵して私は体勢を整える。今迄入っては来なかった教師の解説がスラスラと鼓膜を揺らしている。屹度只の、思い込みだったのだ。
──何処からか耳鳴りのような金属音が響いた。
授業を終え、男友達は級友と取っ組み合いに教室を駆け回る。奴は何時迄、小学校低学年をしているのだろうか、と思いながら眺めていれば眼前を通り過ぎて行った。其の際に彼の机が揺れ、出しっ放しにされていたノートが重力に従って床に落ちる。私は其れの裏表紙を掴んで拾い上げると、最後のページがぎこちなく揺れた。
何となしに彼が先程必死に隅に描いていた物を覗こうと思い、自席に座ってノートを広げる。右端には、御世辞にも上手いとは言えないような、非常に残念な人間らしき絵が描かれていた。下手だと失笑しかけた時、ふと気付いた。
絵の人物の前髪が、江雪の対称でない前髪と酷似している事に。
薄くシャーペンで加減されたように灰色に塗られた髪色は、色素が薄いと云う事なのだろうか？紺青の髪は淡い色をしている。──其処迄考えた所で、又もや気分が悪くなってきた。
「……ッ、あ……」
そして思い出した。
昨年の今頃だろうか。放課後、教室の照明を態々消してカーテンさえ少しの隙間も無いように閉めてから中央の席に向かい合って座って、男友達と二人きりで心霊話をしたのは。私達は心霊話が好きで、よく語り合っていたものだ。
其の際、彼はこんな豆知識を得意げに語っていた。
「夜に一人で部屋ン中に居るとさ、何となく誰かに見られてる気がする時ってあるじゃん？けど振り返っても誰も居ないとか。其れって、背後に居るんだとかそう云うのじゃなくて──」
上に居るんだよな。
怖くて上を見る事はしなかった。頭上から金属音が響く。
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コウ(プロフ) - 卯月さん» コメントありがとうございます！何度か読み返して、描写が上手く伝わっていないのではと不安に思っていたので、その言葉を見て安心しました。次作も頑張って更新進めたいと思います！ (2017年10月1日 23時) (
レス) id: bfc9344f18 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - 面白かったです！描写が丁寧で、凄いなーとか思いながら読んでました！次作も頑張ってください！！ (2017年10月1日 23時) (レス) id: 58c246c3a9 (このIDを非表示/違反報告)
不知火 - はいっ!大丈夫です！更新頑張って下さい！ (2017年6月28日 22時) (携帯から) (レス) id: 0a98efea53 (このIDを非表示/違反報告)
コウ(プロフ) - 天宮さん» 前作からコメントありがとうございます！更新なるべく早く出来るように頑張ります！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 2e6af04341 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - うおおおおおお！新連載ですね！いつも楽しんで読ませて頂いてます。更新頑張って下さい！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 571fb048dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：コウ | 作成日時：2017年6月16日 0時
