二左 ページ2
多少酷使すれば、江雪はすぐに左文字兄弟等の練度に追い付いた。剥がされた刀装を補う為に刀装を作らせれば、特上を一発で捧げてくれる割には台詞が暗く、此方迄暗くなりそうである。
帰宅後、皺が寄るのも気にも留めずに制服を脱ぎ捨てると、パソコンを立ち上げる。ゲーム画面を開けば、ログインボイスは江雪だった。長々と続く台詞を漸との思いで聴き終える。江雪のログインボイスを意識して聞くと、何だか眠気に誘われてしまう。キーボードに覆い被さるように突っ伏すと、左頬の痛みと共に重くなる瞼を閉じた。
*
「頬は痛みますか」
左頬を摩る手付きが胸に沁みる。
視界の隅から眼前に続く白い腕より上に目を向けると、袈裟を纏い紺青の長髪を揺らす彼が居て、私ははっとして頬の痛みを思い出す。きっかけは思い出せない程に実にくだらない事なのだろうが、学校で男友達と殴り合いの喧嘩をしてしまったのだ。元々口が悪く、喧嘩っ早い性分故に頻繁に喧嘩をして毎度、怪我を負っている。
内頬に歯が掠ると鈍い痛みが走って思わず顔を歪めてしまう。
「少し。……まあ、自業自得だから」
「……致し方無い、と？」
否定するように目を一度伏せ、私の左頬を幾度も摩る。次第に痛みが緩和されていくような気がした。
不意に彼が抜刀する。刀身に手を滑らせながら、私に問い掛けた。
「……貴女は、命を断つ為の道具である私が、貴女を守る為にならば血を吸うと言えば、貴女を傷付けた愚者に刃を突き立てたいと言えば──」
笑いますか、私は可笑しいのでしょうか、と途切れ途切れに小さく呟く彼の目は、唯々私を見詰めている。実に無慈悲な瞳をしていた。
私の口から答えが吐き出されるのを今か今かと待っている。
私は彼を見上げ、ゆっくりと口を開いた。
*
「……戦いが終わる日は、果たして来るのでしょうか？」
自分の寝言と、耳元で流される放置ボイスに叩き起こされる。大きく欠伸をして、左頬の痛みが薄れている事に気付いた。手鏡に映してやれば頬の腫れの代わりに、猫の引っ掻き傷にも見える、真一文字の切り傷が一つ出来ている。指先で触れてみても痛みは微塵も無いので如何でも良いのだが。
未だ不明瞭な視界で画面内の江雪を見る。片合掌に伏せがちの目は、まるで目を逸らしているようにも思える。処で、先程見ていた夢の内容は何だったのだろうか。私は何か忘れてはいけない物を忘れてしまったようで、実に不愉快だ。
──ふと画面内の彼と目が合った。
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コウ(プロフ) - 卯月さん» コメントありがとうございます！何度か読み返して、描写が上手く伝わっていないのではと不安に思っていたので、その言葉を見て安心しました。次作も頑張って更新進めたいと思います！ (2017年10月1日 23時) (
レス) id: bfc9344f18 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - 面白かったです！描写が丁寧で、凄いなーとか思いながら読んでました！次作も頑張ってください！！ (2017年10月1日 23時) (レス) id: 58c246c3a9 (このIDを非表示/違反報告)
不知火 - はいっ!大丈夫です！更新頑張って下さい！ (2017年6月28日 22時) (携帯から) (レス) id: 0a98efea53 (このIDを非表示/違反報告)
コウ(プロフ) - 天宮さん» 前作からコメントありがとうございます！更新なるべく早く出来るように頑張ります！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 2e6af04341 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - うおおおおおお！新連載ですね！いつも楽しんで読ませて頂いてます。更新頑張って下さい！ (2017年6月25日 23時) (レス) id: 571fb048dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：コウ | 作成日時：2017年6月16日 0時
