検索窓
今日:40 hit、昨日:398 hit、合計:59,807 hit

4 ページ19









──お話上手な黒尾さんとの会話は途切れることもなく、彼との帰り道はいつだってあっという間だ。

もちろん他の部員と帰るのも楽しいけれど、……やっぱり黒尾さんと2人きり、というのは特別だから。




「……あー、やっぱ混んでるな」

「ほんとだ。この時間ですもんね」


時刻表から2分遅れてホームに滑り込んできた電車を見て、黒尾さんが苦い声をあげた。

部活後の、夕方から夜にかけたこの時間の電車は、だいたいいつも混んでいる。

昨日はもう少し遅い時間帯だったからまだ空いていたけれど、今日はかなりぎゅうぎゅうだ。


開いた扉から覗いてもやっぱり中はぎゅうぎゅうで、入るのに若干尻込み。

ごめんなさいと心の中で全力で謝りながら、私はそっと電車内に足を踏み入れた。

当然すぐ後ろから黒尾さんも乗り込んできて、混み合った車内で体が触れ合う。


──どくり、思わず体が強ばった。



「Aすぐ降りるだろ、こっち来な」


いつもより幾らかボリュームを落とした声で言いながら、黒尾さんが私と位置を代わってくれる。


──こうやってスマートに優しくしてくれるから、どんどんどんどん好きになってしまうのだ。

……彼にはきっと、他意なんてないだろうに。


黒尾さんにとってはたぶん、こういう風に相手を気遣うことは当たり前なんだと思う。

私相手じゃなくて、……たとえばリエーフくんが相手だったとしても、黒尾さんは先に降りる人をドアの前に立たせてくれるはずだ。


「……ありがとうございます」


そんな彼の優しさに惹かれる反面、……ズルい私は、こんな最低なことも思ってしまう。


──私だけだったら良いのに、なんて。



「……にしてもほんと混んでるな。身動き取れねえ」

「ですね。私は2駅で降りれるから、黒尾さん頑張ってください」

「くそ、乗り換え羨ましい」


ひそひそ、小声で囁くようにしながら会話をする私たち。

少し動けば黒尾さんのシャツに触れてしまいそうで、私はひたすら無心でスクールバッグを握りしめた。

近すぎるこの距離に、……心臓の音が鳴り止まない。



──と、その瞬間。



「……っぉわ、」


ガタンと一瞬大きく車内が揺れて、黒尾さんが小さく声をあげる。

後ろから押されてバランスを崩した彼が、そのまま私の背後の扉に右手を伸ばした。

ドン、短く音が鳴る。



──本当に至近距離、睫毛が当たってしまいそうなその距離で、黒尾さんの赤いネクタイがゆらりと揺れた。



5→←3



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (202 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1186人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー!! , 黒尾鉄朗   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

暁☆(プロフ) - 黒尾ファンさん» ありがとうございます、頑張ります🙇‍♀️ (4月15日 8時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - お手伝いは、聞いてない〜⁉ヤバこれは、現実でもキュンってするところ。うわぁもうヤバいしか言えないこれからも頑張ってください (4月13日 7時) (レス) @page25 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - yuuuさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです🥰 (4月11日 23時) (レス) id: f35ddf974d (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 黒尾ファンさん» 嬉しいコメントありがとうございます!頑張りますね💪 (4月11日 23時) (レス) id: f35ddf974d (このIDを非表示/違反報告)
yuuu(プロフ) - ドキドキ、きゅんきゅんでした💖だいすきです♡ (4月11日 19時) (レス) @page24 id: 6410d877bf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:暁☆ | 作成日時:2024年3月20日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。