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「……まあ、何でもいいけど」
手に持っていたタオルで汗を拭ってから、研磨さんが小さく笑う。
「あんなに懐いてるクロ、あんまり見ないから。適当に構ってあげてね」
──懐いてる。
その彼の言葉に、……ああと思わず納得。
確かに黒尾さんのあのかんじ、何だか既視感があるよなぁと思っていたけれど、懐いた野良猫みたいなムーブなんだ。
懐かれた理由は特に思い当たらないけれど、やっぱり昨日の夜のことなんだろうか。
──黒尾さんはいったい、私のことをどう思っているんだろう。
「何話してんの」
そんなふうに研磨さんと話していると、話題の中心にいた黒猫さんが、ひょっこり体育館から顔を覗かせた。
ゲ、とあからさまに顔を顰める研磨さん。
「出た」
「出たって何だよ。人をオバケみたいに言わないでくださーい」
「暑いから絡まないで。A、あとよろしく」
「えっ」
黒尾さんのことを私に押し付けて、研磨さんが逃げるように体育館に戻って行く。
黒尾さんはそんな研磨さんの背中を見送って、それから迷いなく私の方に寄ってきた。
「お、お疲れ様です!」
「お疲れー。洗濯ありがとね、手伝う」
「えっそんな、疲れてるだろうし大丈夫です」
「俺がやりたいからいーの」
私の断りを流しつつ、黒尾さんが洗濯カゴに入っていたビブスを1枚取り出す。
そのまま慣れた手つきで干していく彼を見て、……まあいいか、と思い直す私。好きにさせよう。
「そんで、研磨と何話してたわけ?」
「……黒猫が懐いたっていう話です」
「へー。この辺猫いるんだ」
まさか黒猫が自分のことだとは思いもしないようで、黒尾さんは興味深そうに頷いた。
音駒にも何匹か住んでるよな、なんて言いながら笑って、私を見る。
「Aは犬猫どっち派?」
「……猫、かなぁ」
「ハイ異議あり!絶対犬!」
私の猫派宣言に、ビシッと手まで挙げて反論してくる黒尾さん。
可愛いなぁ、思わず小さく笑うと、彼はキョトンと瞳を瞬いた。
──大人っぽいひと。いつも余裕があって、何を考えているのか分からないような。
少しだけ、遠い存在。
だけど今の黒尾さんからは、そんな印象は少しも抱けない。
意外と子どもっぽいひと。案外分かりやすくて、甘えたで、構ってちゃん。
一気に縮まった気がする黒猫さんとの距離が、ただただ嬉しかった。
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暁☆(プロフ) - 黒尾ファンさん» ありがとうございます、頑張ります🙇♀️ (4月15日 8時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - お手伝いは、聞いてない〜⁉ヤバこれは、現実でもキュンってするところ。うわぁもうヤバいしか言えないこれからも頑張ってください (4月13日 7時) (レス) @page25 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - yuuuさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです🥰 (4月11日 23時) (レス) id: f35ddf974d (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 黒尾ファンさん» 嬉しいコメントありがとうございます!頑張りますね💪 (4月11日 23時) (レス) id: f35ddf974d (このIDを非表示/違反報告)
yuuu(プロフ) - ドキドキ、きゅんきゅんでした💖だいすきです♡ (4月11日 19時) (レス) @page24 id: 6410d877bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2024年3月20日 1時