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23話 ページ25




「抑えなきゃいけねえってのはわかってんだ。でもつい手がでちまう」


そう言いながら、ローラーに向き合う銅橋くん。
口調は荒いし暴力も振るうみたいだけど、でもきっと、そんなに悪い人じゃないんだろうな。

こうやって残って練習する人に悪い人はいないって思う私は単純なのかな。……ううん、そんなことないよね。


「暴力はいけない…けど、3年生に練習サボってる人がいるのは私も知ってるよ。福富さんたちにはバレないようにしてるみたいだけど」


帰るためにロッカーを開けながら、私は今日の練習風景を思い出した。


福富さんを始めとしたあの4人の先輩たちは、ローラーを終えるのが圧倒的に速い。
そのためほとんど1番乗りで外を走りに行く。

黒田さんや泉田さん辺りもそう。真波くん…はローラーなんかそっちのけで山に行っちゃってることが多い。

それから銅橋くんも、比較的ローラーを終わらせるのは早い方だ。


──この辺の選手がたぶん、1軍選手。きっとインターハイに出る6人はここら辺から選ばれるはずだ。

真波くんは正直よくわからないけど、東堂さん曰く登りの技術は圧倒的らしいから速いんだと思う。



そしてこの1軍選手が行ってしまった後の部室は、どうしても緩んだ空気になってしまうのだ。

ダラダラお喋りしながらローラーを回す3年生の先輩。その空気につられて、下級生の緊張感もしぼんでいく。


…私が注意した方がいいのは、わかってる。でも相手は3年生で、私は1年生。

勇気のない私はいつも、先輩たちがゆるゆるの練習をしているのを見て見ぬふりをしている。


「えっと、洗濯ありがとう。鍵お願いするね。無理はしないように気をつけて」


荷物をまとめた私は銅橋くんにそう言って、それから部室のドアを開けた。

おう、と答えた銅橋くんが、すぐにあっと声をあげる。


「てめえ名前なんて言うんだ?」


知らなかったのか。そういえば自己紹介するの忘れてた。


「美森です。美森A」


へえ、と興味があるのかないのかよくわからない返事を寄越してくる銅橋くん。

部室を出て扉を閉じる寸前、小さく笑った彼と目が合った。


「よろしく、A」


……やっぱり箱根学園自転車競技部、1軍選手さまは私のことを下の名前で呼んでくるらしいです。



24話→←※お礼※



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設定タグ:弱虫ペダル , 箱根学園 , 新開隼人   
作品ジャンル:恋愛
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暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» コメントありがとうございます!嬉しいです(*^^*) (2020年9月23日 17時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - ヤバい葵ちゃんタイプ (2020年9月10日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» すみません、ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです (2020年8月29日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - まだかな♪まだかな♪ (2020年8月28日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» ありがとうございます(´˘`*)更新早く出来るように頑張りますね! (2020年8月16日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁☆ | 作成日時:2020年5月1日 0時

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