標的1 ページ1
『…痛い！！！』
毎日毎日、目の前の大人達はメスを突き立ててくる。何度も何度も中止するように言ったが、大人達は絶対に耳を貸さなかった。
この時間が1番辛くて、早く終われと願うことしか出来なかった。
死ぬ、という選択肢ははなから私にはなかった。
今日も私の鮮血が宙を舞う。その日は意外と早く終わり、時間を持て余していた時、トントン、と肩を叩かれた。
『？』
またあの大人達なのかと思い、肩を震わせながら後ろを振り返ると、いつも隅っこにいる少し不気味な子だった。
｢僕と手を組みませんか｣
『何をするの？』
彼が何かを企んでいると察した私は周りに聞こえないように返事をした。
口端がひくつきながらも素直に話を聞いた。
｢君の力と僕の力であの大人達を殲滅しませんか？｣
要は協力して逃げ出そうというわけだ。
『いいよ。』
殲滅、つまり殺すこと。
彼の提案は私の好奇心を擽るものだったので、もちろん肯定の意を示した。
その日を境に彼とはよく話す仲になった。
右目に着けてある眼帯について聞いてみると、彼は眼帯を外し私だけに見せてくれた。
『きれい…』
まるで宝石のように輝いていた。いわゆるオッドアイである。右目には六という文字か刻まれていた。
私も同じ右目に星が刻まれていた。
同じですねと言う彼に嬉しそうにはにかんだ。
彼と出会うまで他の子供には不気味だ、気持ち悪いと言われ続けられたが、彼はそんなことも言わずただ褒めた。
私はこの目を見た瞬間、自分でも気持ち悪いと思った。
でも彼の言葉で私は自分の右目に自信が持てた。
この日から私は彼と過ごすようになった。
*
日に日に周りの子供達が減っていく。
実験で皆死んでいる。
仲良くなれた子達は少なくとも全員死んだ。
漸く作戦決行日になった。
彼の指示通りに私は動いた。
『思ったよりも全然弱いな…』
彼らが与えてくれた力を全力でぶつけて殺す。
何度も何度も鮮血が飛び散ったが気にしない。
この時私は”コロシ”が心から楽しいと思えた。
自分の分を片付け終わったので、彼を探すことにした。
見つけた。
彼は笑顔だった。
その笑顔は年相応の男の子のように思えた。
陰で彼を見ている2人も一緒になって脱出した。
あの地獄とはもう一生会うことはないだろう。
これからは彼等と一緒にファミリーを殺す、と決めたのだ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kk | 作成日時：2022年5月2日 23時
