#10 -1year past- ページ10
＊
「ねえA、"何でやねんイケメン"が呼んでるよ」
って、結衣たちに言われたのはお昼休みのこと。
教室の入り口を見ると、扉にもたれかかって
ちょいちょいっと手招きする男の子が1人。
『...廉くん、わたしみんなと一緒に
お昼ご飯食べたいんだけど』
「俺やって食べたいわ。
やけどお前、昼くらいしか捕まらんやん」
『...怜央、また何かやった？』
「何もやってへん。
...お前、すぐながつが何かやったって
疑ったんなよ。
ちゃうけど、ちょっと聞きたいことあってさ」
きまり悪そうに髪の毛を触りながら、
わたしを呼び出す彼の名前は永瀬廉。
偶然にも怜央と3年間クラスが一緒の、
顕嵐くんと並ぶ怜央の親友である。
...それにしても、"何でやねんイケメン"って、
一体誰が付けたんだろう。
高校に上がる時に大阪から上京してきたらしく、
今もソフト関西弁を喋る彼の口癖は
「何でやねん！」。
で、よく「何でやねん！」を言うイケメンだから、
ってそのままの隠れたあだ名。
ちょっとツンデレな廉くんが
柔らかい言葉を話すのが可愛い、って、
関西弁も彼の魅力の1つだから付けられた
あだ名なのは分かってるんだけど、
わたしはいつも少し笑っちゃう。
そんな廉くんに連れてこられた渡り廊下は、
いい感じに風が吹き抜ける。
桜が散って、木には葉っぱが青々と生い茂って、
空は綺麗に澄んだ水色で。
きっと、あっという間にこの綺麗な青空が
高くなって、夏が来るんだろうなあ。
「俺の親友には、Aとも仲良くなって
もらわないと困るの！」っていう謎理論の元、
怜央を通じて仲良くなった廉くんは、
おっちょこちょいで落ち着きのない怜央が
クラスで何か起こすたびにわたしを呼び出す。
「Aの名前を出すか、
Aに解決策を考えてもらうんが、
1番ながつを落ち着かせるのに効率ええ」って
廉くんは言うけど、正直意味がわからない。
ちなみにこの怜央の謎理論の元で
廉くんと仲良くなったのは顕嵐くんも同じで、
廉くんの謎の理由に深く賛同して
彼も頻繁にわたしを呼び出すようになった。
...君たち、わたしを何だと思ってるんだ！
で、一体今日は何の用で
廉くんはわたしを呼び出したんだろう。
そう思って、怜央と同じくらい背の高い彼を
見上げると、怪訝な顔と目が合って。
「なあA、お前じんと何かあったん？」
＊
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作者名：りり | 作成日時：2017年6月7日 21時
