#37 ページ37
＊
試合の写真のページをめくると、
そこにはケーキを囲んで笑う1年前の怜央とわたし。
「昨年はガトーショコラだったね」
『怜央、ガトーショコラお気に入り？』
「うん、でもAが作るのは何でも好き！」
「今年のも美味しかったな」って、
怜央はわたしを後ろからぎゅっとしながら笑う。
誕生日には毎年2人で撮ってるのに、
どことなく雰囲気がそれまでと違ってて。
一応、関係が変わって1枚目の写真だから、
なはずだよね？
その下には、顕嵐くんも入れた3人の写真もあって。
もう、1年も経ったんだなあ。
「何か懐かしいね」
『うん、1年前なのに懐かしいね。
てか怜央、ちゃんと覚えてたの？』
「覚えてるに決まってんじゃん、Aとの
大事な思い出忘れるほどバカじゃないよ俺！
てかこの時のAの髪型可愛い！」
『...この時のって何だ、この時のって！』
「うわやっちゃった」って顔の怜央を軽く睨む。
悪かったね、今は可愛くなくって。
「ねえ許して？」って、可愛く謝られても
そんなんで許してあげないんだから！
...って意気込んでも、やっぱり怜央には
甘くなっちゃって、すぐ許してしまう。
ねえ、ながつがうざいんだけど＞
カメラフォルダお前の写真無駄にめっちゃ増える＞
てか誕生日にキャッチボール？＞
お前ら中学生かよ！笑＞
図ったみたいに顕嵐くんからのLINE。
怜央から送られてきた、というグローブとボールを
持つわたしの写真が転送されてきて。
『怜央、顕嵐くんに何送ってんの...』
「え？Aの写真！
「今日結局何やってんの？」って
あれんに聞かれたから！」
『何かもうちょっとなかったの！？』
「え、これダメなの！？すっごい可愛いじゃん！」
『何か...何か微妙！
てかそもそも何で顕嵐くんに
わたしの写真送るの！？』
「え、「俺の彼女可愛いでしょ」って
自慢してんのー！」
『そういうことしないでいいから！
もう、本当恥ずかしいじゃんバカ！』
怜央はさらっと"可愛い"とか"俺の彼女"とか、
そういうことを言うから。
そのたびにわたしばっかりがドキドキして、
ずるいなあって思う。
顕嵐くんがからかうのも無理なくて。
もう1年、経ったのかもしれないけど。
わたしが怜央を好きな気持ちも、
怜央がわたしを大切にしてくれることも、
顕嵐くんとも仲良くいられることも。
何も変わってなくて、嬉しいんだ。
＊
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作者名：りり | 作成日時：2017年6月7日 21時
