#17 -1year past- ページ17
＊
考え事をし始めると、
時間の感覚を忘れるのはわたしの悪い癖。
いつの間にか窓からは月が見えている。
全然進まない日本史の課題を一旦閉じて、
ベッドにダイブした。
昨日あんなことを言ったくせに、
じんくんは1日びっくりするほど普通で。
わたしばっかり意識してて恥ずかしい。
けど、意識しないでいろって言う方が
正直無理だもん。
バスケ部の応援に、怜央の応援に、行きたい。
その気持ちは何があったって変わらないはず
なのに、断り切れないのはどうして？
...多分、心のどこかで、
別のわたしが囁いてるからだ。
怜央は別に、わたしから応援されたいなんて
思ってないんじゃないか、って。
わたしばっかりが、怜央のそばにいたくて、
怜央を見ていたいだけなんじゃないか、って。
いい加減、怜央のことは諦めて
他の人といた方がいいんじゃないか、って。
じんくんは真っ直ぐに、「サッカー部の試合を
見に来てほしい」って言ってくれた。
いいところを見てほしい、
そして考えてほしい、とも。
じんくんがとっても素敵な人だってことは
クラスで一緒にいればよく分かるし、
そんな人がそんな風に言ってくれて、
嬉しくない訳じゃないから。
だったら素直に、その気持ちに応えた方が
いいんじゃないの？って。
多分、どこかでそう思う自分がいるから。
こんなにそばにいても、
怜央はわたしの気持ちには気付かない。
ずっと、それでもいいって思ってた。
それでも、怜央の1番近くにいれたら
十分しあわせだ、って。
けど、もう今年で高校も終わりで、きっと来年には
生まれて初めて怜央と別々の道を進むことになる。
その時がきっと、
諦めるタイミングだってずっと思ってた。
それがちょっとだけ、早くなるだけ。
...ただ、それだけのことなのに。
こんなにも胸がぎゅってして、
怜央のことが好きだって思うのは、何でなのかな。
どうしようもない気持ちが理由で
泣いちゃう自分が嫌で枕に伏せる。
...と、ドタバタと下から
誰かが階段を駆け上がる音がした。
「Aーーーーー！
来月の試合来てほし...って、
え、何で泣いてるの！？」
...何でこういう時に来ちゃうの、バカ。
こうやって、怜央はいつも
わたしの気持ちを離さないから、ずるいんだ。
＊
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作者名：りり | 作成日時：2017年6月7日 21時
