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＊
わたしって、つくづく単純だな、と思う。
だって、感情が驚くほど絵に出る。
今日描いた色鉛筆画なんか顕著で、
ここ最近描いたものの中で1番綺麗な色。
ああわたし、何だかんだ言ってもはしゃでるんだ、
先生と2人で朝凪を見に行くことに。
絵を見たら、そんなことすぐに分かってしまう。
『これが無意識ってどういうことよ...』
いつの間にか外は薄暗くなっていて、
こんな時間まで描いていたことにも今気付く。
外から聞こえてた野球部の声は聞こえなくなって、
グラウンドでどこかの部活が片付けをしている、
そんな音ががちゃがちゃと聞こえるくらいで。
風も、ちょっとだけ、夕方仕様に冷たい。
作間くんのいなくなった美術室はがらんと広くて、
この時間になると1人はちょっと寂しかったり。
「何時までやるつもり？そのサブの絵」
『...まだいたんですか、』
「明日の教材、思ったより多くて手こずった」
『珍しいですね』
寂しいと思ったタイミングでふらりと現れる、
やっぱり先生は人の心が読めるのかもしれない。
キィ、って、先生が引いた椅子から古い音。
いつも通りの、隣だけど、少し離れた席に座って、
わたしの絵をゆるく眺めるこの光景も、
もうそんなに多くないのかなあ、とか。
...ねえ、先生。
もっと近くに来て、って言ったらどうする？
わたし、本当はそんなに絵にこだわりないんだよ。
上手く描けたら家族が喜んでくれるのが嬉しくて、
そのために描いてたら好きになっただけだもん。
だから、もっとこうして、って言ってくれたら、
先生の好みにもっと合わせるのに。
もっと近くで、先生の望む色に染めてよ。
「...明日、朝4時。出てこれる？」
『...はい、』
「じゃあ、学校のひと駅先の駅前の海岸に4時で。
海岸の入り口のボードのとこで待ってる」
言い捨てるように告げて目も合わせず去っていく。
ああ、早く夜が明けてほしいような、
明けてほしくないような、
ふわふわした気持ちが止まらない。
＊
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作者名：りり | 作成日時：2019年9月1日 20時
