辛めのシュガードーナツ ページ19
ご飯食べたあと、さとみくんはソファーで寝始めた。
小さく書いた手紙。
机の上に置いて荷物を持った。
帰らなきゃ、いけない。
ここにいるのは、迷惑でしかないのだ。
さとみくんに迷惑がかかる前に出なくちゃ。
私はさとみくんとのやり取りを消すために、
ラインを消した。
私がいたという痕跡を、消さなくてはならない。
握りしめたスマホはギリッと音が鳴る。
さとみくんの形態に手を伸ばした。
彼の手を少し借りて、スマホを開いた。
写真もLINEも全て消してしまうために開いた。
たくさんの写真、私は笑ってる。
ジェルくんといるときよりもずっとずっと。
分かっている。
ここに帰ることは無い。
自分の痕跡を消したスマホを元の位置に戻しておいた。
音を立てないように立ち上がり、足元にいたひなちゃんをゆっくり引き離した。
強くない私でごめんなさい。
さようならもありがとうも言わずに、出ていく私を許さないで。
にゃあん、そう鳴いてよってくるひなちゃんをゲージに入れたあとさとみくんを見る。
静かに眠るさとみくんは優しい。
きっと私が「助けて」と言えば、助けてくれるだろう。
その優しさはずっと変わらない。
さとみくん。
あなたが好きで好きで大好きだ。
それはリアコと変わらない感情で、私はあなたの生き方が好きだった。
靴を履いて、立ち上がる。
暫くはジェルくんとも連絡は取れないかな。
そう思ってドアノブに手をかけた。
瞬間、お腹に回った腕に強く引かれて後ろへ倒れ込んだ。
背中にはあたたかい体温。
何度か助けて貰った体温が背中にある。
心臓が止まった気がした。
まるで、ナイフで突き刺されるような痛み。
動けずにいると、「どこいくの」と低い声が耳にこだまする。
その低い声にビクリと体が震えた。
怒ってるような声。
身体中がこわばった。
「実家に帰ってどうするの」
その言葉に反射的に振り返ってしまう。
なんで、と口から零れた言葉に反応するかのようにお腹に回った腕の力が強くなる。
「ジェルから聞いた」
「…え」
「俺に迷惑がかかるから出ていくだろうって」
ああ、なんて余計なことを。
耳の奥でうるさい音がする。
動くにも逃げ出すにも私の体格では難しい。
さとみくんには勝てない。
「俺も気づいてたよ、もちろん」
「はい？」
「手紙、きちんと捨てないとね」
そう言ってさとみくんの空いてる手から出てきたのはあの時の手紙だった。
☆
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はちみつ(プロフ) - はのさん» 2度もコメントありがとうございます。どちらも読ませていただいておりました！特にこう言う界隈は他界隈への影響も大きので少しでもリスナーの意識が変わったらなーと思いつつ書きました。素敵な作品と言ってくださり、ありがとうございました！ (2020年2月3日 2時) (
レス) id: fdd37857b4 (このIDを非表示/違反報告)
はの - 二度目のコメント失礼します。完結おめでとうございます！更新お疲れ様でした！！こういうことがありえそうなのが怖いですよね…特にこの界隈は年齢層が低いのでそれも踏まえて、ですよね…考えさせられる素敵なお話をありがとうございました。次回作も楽しみです。 (2020年1月27日 1時) (レス) id: d7c684c614 (このIDを非表示/違反報告)
はの - お話の題名が素敵すぎます…！内容も面白いし現実的で凄く素敵です！こんな素晴らしい作品なのに素敵としか言えない自分の語彙力を恨みます…作者さんのペースで頑張ってください！応援しております！！ (2019年9月16日 4時) (レス) id: d7c684c614 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：舘 | 作成日時：2019年8月5日 3時
