変わった兄妹 【太宰 治】

46話 ページ47

Aside

頭に柔らかい、とても心地よい感覚がした

目を開けると兄さんが僕の頭を撫でていて、謝った

頭はクラクラしてボーッとする

これはきっと夢なんだ

兄さんが僕に謝るなんてする訳ない、頭を撫でてくれる事はもう一生ない

だからこれは夢だ

『兄、さん……』

兄さんが立ち上がろうとしたのを止めた

今は一人になりたくない

どうせこれは夢だ

どうせ夢なら、甘えたっていいでしょ、兄さん？

僕だって、本当は心のどこかで寂しいんだ

自分でも普段は自覚してないけど

いまなら分かる

僕は、寂しい

マフィアに入ってから、兄さんは酷く冷たくなった

何が原因か分からなくて、最初はこっそり泣いた

でも、それがずっと続く内に諦めてしまった

もう優しい兄さんは居ないと、もう僕の頭を撫でてくれる事も、手を繋いでくれる事も、寝てくれることも無い

だったらせめて、夢の中だけでも甘えさせてよ、兄さん

僕ね、本当は寂しがり屋なんだよ

覚えていないかもしれないけど、兄さんが居ないと寂しくて寝れなかったんだよ

ねぇ兄さん、少しでいいんだ

夢だから、甘えさせてよ

『兄さん、行かないで……夢なら、甘えても、いいでしょ？』

お願い、兄さん

今だけは、一人になりたくない

一人は怖い

『お願い、兄さん…………行かないで、一人にしないで。一人は、寂しいよ……！』

太宰「一人になんかしない、ここにいるよ、A。一人が寂しいのは、君が本当は寂しがり屋なのは私が一番知っている。傍に居るから、安心していいんだ。だから、”泣くな”。寂しくなんかさせない」

ほら、やっぱり夢だ

マフィアに入ってから、こんな優しい兄さんは見た事がない

言われた事も無い

手も、繋いでいいかな……

僕が兄さんの手をにぎると、兄さんも握り返してくれた

『兄さん、ここに……いて。兄さんが居ないと……寂しくて、寝れないよ……』

昔みたいに、傍にいてよ、兄さん

太宰「一人にで寝れるようになったんじゃなかったのかい？」

『今は、寝れないの……兄さんが居ないと……寝れないよ』

一度止まった涙が溢れそうになる

泣くなと言われたのに

「じゃあ、今日は特別だ。”兄ちゃん”が一緒に寝るよ、そうすれば寂しくないだろう？」

兄さんがベッドの布団に入って、抱き締めてくれる

あぁ、温かい

温かいね、兄さん

『うん……おやすみ』

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