変わった兄妹 【太宰 治】

29話 ページ30

太宰side

いつもの様に、行きつけのBARに向かった私は思わず階段で止まった

ここにくれば、織田作と会えると思ってきたが

まさか妹にまで会うとは思わなかった

話の内容はしっかり聞こえた

織田「どうだ、最近太宰とは」

『最近ねぇ……昨日兄さんの様子がおかしかったかな』

織田「様子が？体調でも悪かったのか？」

『あー、そういう事じゃなくてね。なんて言うか……僕に優しかった』

優しかった

昨日抱き締めた事を言ってるのか

確かに、Aを抱き締めたのは数年ぶりだった

寧ろ厳しく接してきたから、抱き締めるなんてする訳ない

織田「いい事じゃないのか？優しくされるのは」

『優しくだよ、優しい〜く。あの兄さんが、何考えてるのか恐ろしい限りだよ』

酷い言い様だね、それは

お仕置に訓練時間を増やそうか

私だって、たまには優しくする時だってある

織田「優しくされたくないのか？」

『そういう訳じゃない、ただ……』

織田「ただ？」

ただ、何だ？

その言葉の続きの意味によっては、訓練時間を増やす事確定だけど

『兄さんが僕に優しく接するなんて、そもそもおかしな話だよ』

おかしい？

私だって、人間だ

誰かに優しくする時だってある

なのに、この子は何を

『兄さんはきっと、僕の事を使い捨ての駒としか思ってない』

Aの言葉に、心臓がズキズキと痛んだ

違う

君は駒なんかじゃない

使い捨てなんかじゃない

『僕に、妹としての情なんか無いよ』

違う

Aは私の妹だ

私の、情がない訳……

『兄さんは僕の事が嫌いだから』

違う

君を嫌いになんてなった事、一度も……

Aの言葉にズキズキと心臓を痛める

織田作が、Aの頭を撫でた

私がAの頭を最後に撫でたのは、もう、なんねんまえだったか……

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