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102 ー千寿朗sideー ページ8

―千寿郎side―


母が亡くなって以降、

初めて屋敷内での騒ぎが起こっている。




緊張のせいで、昨晩はあまり眠れなかった為か

これほどの非常事態が目の前に広がっていても

僕はぼーっとしてしまっていた。




単純に頭の整理がついていないのか否か、

確かめる術も今はない。




第一に、父が公式に客人を招き入れること自体、

初めての出来事である。



泣き散らす客人。


その少女を宥めるAと、

大声で謝罪する兄。



そしてそれを呆れた表情で眺める父。



そんな三人の顔色を

僕は順番に伺っていた。



少女を慰めてやりたいのは山々であるが、


少女の泣き声に、

父がいつ怒鳴り散らかすかが不安で仕方なかった。




A「杏寿郎さんが人を忘れるのは

  今に始まったことではありません。


  この方は
  人の名前もすぐには覚えられませんが、

  特に悪気はないのです」




杏「むっ…!?

  ……とにかく、すまない!!!!!」




溢れ出てくる涙を、着物の袖で擦り拭う少女へ

二人は必死に話しかけている。



不謹慎だと思われるかもしれない。



しかし、僕にとってそんな二人の姿は、

とても微笑ましいものに見えたのだ。




槇「こざかしいマネはやめろ」



耳にこびりつくような低い声に、

部屋中の空気が一瞬にして張り付く。



緩みかけていた僕の頬も

ピシリと固まって動かなくなるのを感じた。




恐る恐るその視線を父の元へ向けると、

細く釣り上げられた父の瞳は


真っ直ぐにAだけを捉えているのが

すぐにわかった。



不穏な空気に、息がつまりそうになるのは

今に始まった事ではない。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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あいふぉん - 初めまして。とても素敵なお話で一気に読んでしまいました!!煉獄さんが本当にかっこよすぎて夢主が可愛すぎてっっ!!続き楽しみにしています!! (2021年10月5日 0時) (レス) id: 367ee183e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年8月27日 20時

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