45 ー杏寿郎sideー ページ48
5年前
ー杏寿郎sideー
『ま、勝手にすりゃあ良いんじゃねぇの』
夜風よりも速く。
呼吸を使って駆け抜ける。
宇髄なりの優しい言葉に感謝しながら、
俺は故郷の村へと向かっていた。
杏「っ」
スピードを出しすぎていたからか、
危うく木々にぶつかりそうになる。
いつもなら起こらない安易なコントロールミスに
俺はハッとした。
『―けど煉獄。
無茶すんじゃねぇぞ。
…柱にならなきゃいけねぇんだ、俺も、お前も』
まるで走馬灯のような勢いで、
宇髄の声が再び耳に届く。
その瞬間、
突然目の前に現れた大木に
全速力のままぶつかった。
杏「ぐっ…」
全身をその幹に強く打ちつける。
そのまま情けなく、俺の体は宙に投げ出された。
『だからこんなとこで、
くだらねぇミスで、
死に腐るんじゃねぇぞ。煉獄』
綺麗な下弦の月を、宙に舞いながら眺める。
もう一方の西の村へと向かった宇髄の言葉は、
いつもより妙に重かったなと考えながら
俺はその月に手を伸ばした。
その瞬間、
体は地面へと下ろされる。
ぼんやりとしていたので
受け身を取ることもできず、
俺は数十秒痛みに悶えなければならかった。
杏「……っ」
数十秒後、ようやく立ち上がった俺は、
隊服や羽織についた泥を払う間も無く
再び走り出す。
俺は腑抜けていた。
どうしようもないほどに。
今、故郷の村に足を急がせながら考えていること。
それは、「今から鬼をどう倒すか」でも、
「父上や弟のこと」でもなかった。
「4日前にAとの間に起こったこと」だった。
もちろん心配だった。
彼女の身に何か危険が及ぶことほど
恐ろしいことはない。
しかし今はそれ以上に
彼女とこのまま会えなくなること。
そして4日前のあの行動の “答え”を
聞けなくなること。
それが、きっと何よりも怖かった。
この長期任務中、1秒たりとも
彼女の『いかないで』の
声が消えることはなかったし、
あの時見下ろした、
彼女の赤面した表情を忘れることはなかった。
ただAに
会いたくて、
会いたくて、
確かめたくて、
俺は死んでしまいそうだったのだ。
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まるまるもりもり(プロフ) - さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き)さん» たしかにそうですね!そうすぎますね!!!!!書き直させていただきます!的確なご指摘本当にありがとうございます(TT) (2021年3月14日 11時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - すいません・・・「エピローグ」の所、物語の最初なので「プロローグ」の方がいいんじゃ・・・(^_^;) (2021年3月14日 6時) (レス) id: ff085d1bee (このIDを非表示/違反報告)
まるまるもりもり(プロフ) - 凪子さん» 凪子さん、素敵なコメントありがとうございます^ ^ そうですよね!煉獄さんは身分差は気にしない素敵な人ですよね(*^^*) 凪子さんにもっと楽しんでいただけるように、頑張ります!! (2021年3月13日 23時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
まるまるもりもり(プロフ) - 衣世さん» 衣世さん^^コメントわざわざありがとうございます!とても嬉しいです(^-^)ハッピーエンドになるように頑張りますね!! (2021年3月13日 23時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - 身分の差…煉獄さんは気にしないと思いたいです!展開を楽しみにしています(^^) (2021年3月13日 8時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年3月12日 20時