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-Aside-


私は明日にでも出そうと漬け込んでいた大学芋を

こっそりと台所の戸棚から持ち出すのであった。




それから自身の部屋から満月を仰ぐ彼の元へ

届ける。




A「杏寿郎さん」



私がそう名前を呼べば、

たいてい彼は嬉しそうにこちらを向くので


ついつい優越感に浸ってしまう。





私の悪い癖だ。






いつもより柔らかい生地の浴衣に袖を通す彼は、

月夜によく合う、いい男だった。






…本当に彼はいい男だ。






私は手招きされるがまま、

縁側で胡坐をかく彼の横へ座る。




ダメだとわかっているのに、断れない。



この笑顔を拒めない。




杏「懐かしい。

  昔はよくここで夜明けまで、話でもしたのにな」





風に吹かれながら、

幸せそうに大学芋を頬張る彼から、

目が離せなかった。



杏「君も随分余所余所しくなってしまったな、

 A」




不意に彼の瞳が私を捉えたので、

私は反射的にそっぽを向く。




それから彼の寂しそうな声に、

耐えられず口を開いた。





A「昔は子供だったので、
 
  私も距離感を
 
  よくわかっていませんでした。


  …でも、

  私たちはこのくらいの方が良いんですよ


  もう私たちも、

  子供のままではいられません」






少しの沈黙の後、

さらに寂しげな声で彼が


そうか


と告げるので、

いま彼がどんな表情をしているかは

見なくともわかった。





それから、千寿郎もそんなことを言っていたな

と小さく呟いている。





杏「父上にも、千寿郎にも

  よく怒られるようになってしまった。


  女中とその主人の長男となると、

  こうも身分差を与えられてしまうものなのか」







A「......そうだね」








不意に出た私の数年ぶりのタメ口に、

もともと大きい瞳を、さらにまん丸にさせる彼。



それは今宵の満月と瓜二つだった。




そんな彼を前に私は奇しくも

声をあげて笑うのだった。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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まるまるもりもり(プロフ) - さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き)さん» たしかにそうですね!そうすぎますね!!!!!書き直させていただきます!的確なご指摘本当にありがとうございます(TT) (2021年3月14日 11時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - すいません・・・「エピローグ」の所、物語の最初なので「プロローグ」の方がいいんじゃ・・・(^_^;) (2021年3月14日 6時) (レス) id: ff085d1bee (このIDを非表示/違反報告)
まるまるもりもり(プロフ) - 凪子さん» 凪子さん、素敵なコメントありがとうございます^ ^ そうですよね!煉獄さんは身分差は気にしない素敵な人ですよね(*^^*) 凪子さんにもっと楽しんでいただけるように、頑張ります!! (2021年3月13日 23時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
まるまるもりもり(プロフ) - 衣世さん» 衣世さん^^コメントわざわざありがとうございます!とても嬉しいです(^-^)ハッピーエンドになるように頑張りますね!! (2021年3月13日 23時) (レス) id: 1253c02f70 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - 身分の差…煉獄さんは気にしないと思いたいです!展開を楽しみにしています(^^) (2021年3月13日 8時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年3月12日 20時

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