煉獄家の女中が鬼殺隊に入らない理由【煉獄杏寿郎】

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ーAsideー




私は鬼を狩ることや

他の人の命を守ることに対しては、

なんのこだわりも持っていない。




彼みたく、燃えるような志もなければ、

悪鬼滅殺への執着もない。




それは私が鬼殺隊に正式に入隊していない

理由の一つでもある。





それでも私が5年前を境に

血の滲むような努力を重ね、


女としての気品を捨て

泥にまみれながらここまでの強さを手に入れたのは


たった一つの目的があるからだ。






……彼はまだ、それを分かっていない。






そしてまた、私に鬼殺隊入隊を奨めるお館様でさえも

きっと分かっていない。





杏「しかしその礼服、実によく似合っている。

　 何度見ても飽きないな！

　
　 お館様もAの姿を見るのを

　 楽しみにしておられた」





同じような屋敷がいくつも立ち並ぶ村で、

竹林に沿うように歩き続けると


いつしか繁華街へと繋がる路地に出る。





私は二人で歩くそんな何気ない道のりが

何よりも好きだった。





A「そうですね…。

　 私がお館様に顔をお見せするのは

　 おおよそ半月ぶりくらいでしょうか」





その半月の間に、何度か私にお声かけがあったこと。

そしてそれを私が断り続けたこと。



そんなこと全部、彼は知っているのだろうし

彼自身、

お館様から何かしら聞くこともあったのだろう。





それでも彼は、

一番近くにいる彼だけは、



私に鬼殺隊入隊を一言も勧めてはこなかった。






そればかりか、

私がそれらを拒む理由を聞いてきたことも無い。




私が5年前、突拍子もなく鍛錬を始めた時も

彼は私には何も問い詰めたりはしなかった。




彼は私に対して、放任主義であるわけではない。






彼はただ、昔から

私に対して、一番大切なことは聞いてこなかった。

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