血 ページ10
正直、不安だった。
刀剣男士を出陣させる際は部隊を組んで実力に見合った場所に出陣させろ、という事は研修で習っていた。けれど実際はどうだろうか。
いくら鶴丸本人が大丈夫だと言ったからだとしても、単騎で出陣させてしまった事実には変わりない。
鶴丸の言葉を疑う訳では無いが、それでも胸に蟠る不安が消える訳でもない。
鶴丸が出陣してる間ずっとそんな感じだったからか、出陣先から帰ってきた彼を見た瞬間、サーって音が彼にまで聞こえたんじゃないか、と思ってしまうぐらい血の気が引いた。きっと私の顔は真っ青もいい所だっただろう。
けれどそれも仕方ない筈だ。だって、帰ってきた彼は、鶴丸は、全身血だらけだったんだから。
「つ、鶴丸、それ、怪我、」
「ん?…嗚呼、これか?」
「て、手入れ、早く、」
「落ち着け、これは全部返り血だ」
「…返り血?」
「嗚呼、返り血」
「…………」
嘘だ。絶対嘘だ。返り血だけでそんな全身真っ赤になんてなるものか。
……なんて、思っていた時期が私にもありました。
「……本当に、全部返り血だ」
「だから言っただろう。そもそもどうしてきみはあそこまで動揺した。研修を受けていたなら見習い先で誰かの怪我を見るぐらいはあっただろうに。その時に血も見ただろう」
「た、確かに見習い先で手入れをさせて貰った事はあったけど、先輩はベテランも良いところな人だったから刀剣男士も滅多に怪我しなくて、怪我してもそこまで派手なものじゃなかったって言うか…」
「へえ?まあそんな事どうでもいいが、これから審神者としてやっていくなら血の一つや二つには慣れておいた方が良いぜ?」
「うっ…」
あまりの全身血だらけの姿にそれが全部返り血だという事が信じられなくて、半ば強制的に手入れ部屋に連れ込んだは良かったけれど、刀を見せてもらえば刃こぼれどころか傷1つ見当たらなくて。
鶴丸にはそれでも審神者かとでも言いたげな目を向けられている。
血に慣れろとは言うけれど、いやまあ血そのものには慣れてはいるけれど、だからと言って全身血だらけには慣れたくない。こればかりは慣れる気がしない。
「鶴丸のそれが全部返り血なのは分かったけれど、そもそも返り血ってそんな派手に浴びるものなの?」
「…さてなあ」
私の問いに、鶴丸は何処か他人事であるかの様に答える。
そこからは、理由は分からないけどこれ以上答える気は無いという様子だけが窺い取れた。
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詩月(プロフ) - 冷泉 雪桜さん» コメント有難うございます。この文体で書くのは初めてなのでそう言って頂けて良かったです(*¨*) (2020年1月12日 9時) (レス) id: 47903b2cc4 (このIDを非表示/違反報告)
冷泉 雪桜(プロフ) - 初コメ失礼します。素敵な文章でとても感情移入しやすいですね♪今後が楽しみです。頑張って下さい (2020年1月9日 23時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:詩月 | 作成日時:2020年1月6日 19時