漆 ページ7
三日月side
「三日月さん、湯呑み落としてる…」
左文字の末弟のそんな声が聞こえた気がしなくもないが、それに答えられる程の余裕が俺にはない｡
突如としてこの本丸が神気で満たされ、瘴気が晴れた｡
その時に感じた気は、間違いなくあの子のもの｡
だが、まさか、そんなはずは｡
最後に会ったのだって、千年も前のことだ｡
それに、あの子はこれほどの神気を持っていただろうか｡
そんな俺の杞憂は他所に、あの子の気配は近づいてくる｡
近くに鶴丸と一期の気配も一緒に感じる｡
そうして暫くして、大広間の襖が開いた｡
『…湯呑みを落としとるぞ』
「A…か…？」
果たして、これは夢か現か｡
『久しいな、三日月』
俺の名を呼び、笑いかけるA｡
その姿は、最後に見たあの日と比べて、服装は違えど、それ以外は何1つとして変わっていない｡
どれほど、焦がれていたことか｡
どれほど、もう一度会えることを望んでいたか｡
どれほど､
「A………っ！」
『わ……っ！なんだ、其方らは…
揃いも揃って、妾に抱きつくのが好きよのう』
こうして触れることができるのを、望んでいたことか｡
急に抱き締めた俺に対して、咎めることもせず、笑って、その小さな体で、俺の事を抱き締め返してくれる｡
昔から、小さな体つきだとは思っていた｡
だが、それも思っていただけだ｡
こうして触れなければ、きっと、一生分からなかっただろう｡
小さいだけではなく、Aの体は、随分と華奢だ、と｡
庇護欲を唆られるとは、こういうことを言うんだろうな｡
「会いたかった、A…」
『嗚呼…妾も其方に会いたかったぞ、三日月…』
こうしてまた会えたのも何かの縁だろう｡
俺はもう、お前を離したくはない｡
昔、俺を愛してくれた分、今度は、俺にお前を愛させてくれ｡
俺にお前を守らせてくれ、A｡
昔から、自身の多くを語らないA｡
そんなAが、一度だけ、俺に話してくれたことがある｡
その話をした時のAの表情を忘れたことは、一度もない｡
それ以来、俺はお前を、お前だけを、愛し尽くそうと決めた｡
人の身勝手な都合で、人間の摂理から外され｡
にも関わらず、自身の宿命を受け入れた｡
その強さと表裏一体の脆さを、俺は守りたいんだ｡
もう二度と、その表情を翳らせたりはさせない｡
今はまだ伝える気はないが、想うことは見逃してくれ｡
今も昔も、愛している、A｡
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乃愛(プロフ) - 初コメ失礼します！私、愛され大好物なので嬉しいです！刀剣男士全員推しなので嬉しいです！更新頑張ってくださいね！ (2023年4月7日 21時) (
レス) id: 3b02df20c8 (このIDを非表示/違反報告)
詩月(プロフ) - 胡蝶蘭さん» 胡蝶蘭さん、感想とリクエスト有難うございます！お返事が遅くなりすみません…続編移行をした際に書かせて頂きますね！ (2019年9月16日 7時) (レス) id: 47903b2cc4 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶蘭 - 最後まで見ました！面白かったです！リクエストで、小烏丸と夢主の夫婦的行動みたいなのが見たいです！小烏丸が皆の父上なら平安組より前から生きてる夢主は母上なのではみたいな？（＞ｍ＜）☆ｵﾈｶﾞｲｼﾏｽ (2019年8月26日 2時) (レス) id: 1fa4972d94 (このIDを非表示/違反報告)
咲くや - 面白くて続きが気になります 更新頑張ってください。 (2019年5月27日 23時) (レス) id: 2369d330ed (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - 乱ってもしかして女の子の格好を禁止されてんなら女の子の服を持って土下座してでも「男の娘になってください！」って言うよ← (2019年5月1日 9時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩月 | 作成日時：2019年2月26日 3時
