弐拾弐 ページ22
一期side
「その…手入れ、有難う…」
『何、お安い御用じゃ』
弟達の中でも比較的怪我の軽かった信濃が手入れを受け、それで最後となった｡
『これで其方の弟は全員か？』
「えぇ、まぁ…」
本当のところはそうではないけれど｡
下手に彼女をあの子に近付けたところで、あの子の傷を抉り出すだけならば、言わない方が得策であるのは目に見えている｡
幸か不幸か、あの子は目立った怪我はしていない｡
『そうか。なら、其方の怪我を治して終わりだな』
「な…いつの間に気付いて…」
『妾が怪我を治す時、其方の弟らは皆お主を見ておったからな｡
初めは何かと思ったが、少し考えれば簡単なことだ』
弟達のその動きだけで、弟達だけが知っている、弟達より随分と軽い、可愛く見える私の怪我を見抜いたというのか｡
『後は其方だけじゃ、一期一振。構わぬか？』
彼女の要求に応えあぐねていると、どこからかいち兄、と私を呼ぶ声が｡
それを聞いてしまえば、彼女の要求を無下にするなんてこと私にはできるはずもなく…｡
『兄が弟想いな様に、弟もまた兄想いのようじゃな』
私の手入れを終えた後、誰に言うでもなくそう言い残して、彼女は部屋を去って行った｡
果たしてあの方はこの本丸の構造を把握していらっしゃるのか…｡
少し気になり、彼女の後を追うように部屋を出ると、当の本人は少し歩いた先の所にいた｡
『…ん？嗚呼、一期一振か』
「…戻らんのですか？」
『いやぁ、来たばかりでこの建物の構造をよく分かっていなくてな。下手に動くよりはいいかと思ったんだが…』
「後程、私が貴方を大広間まで案内しましょう。ですので少し、話を致しませんか」
私がそう言えば、目の前の彼女は驚いた表情をする｡
次いで得られたのは、了承の意だった｡
「よくお気づきになられましたな。弟達の様子だけで」
『伊達に長生きはしとらんからな。三日月達もそうであろう？』
言われてみれば平安の方々は、他よりも洞察力に長けている｡
『にしても、前任は随分と死にたがりだったのだな』
「…何故、その様にお思いで？」
『短刀は本来、守り刀として持ち主の傍に置かれる。それがどうだ｡
盾が脆ければ無いも同然。そうは思わぬか？』
暗に彼女は、守りを担う短刀を無下にすることで、敵に身一つを晒してるも同然、と言いたいのだろう｡
この方があの方々に慕われる理由が、少しだけ分かった気がした｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1821人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
乃愛(プロフ) - 初コメ失礼します！私、愛され大好物なので嬉しいです！刀剣男士全員推しなので嬉しいです！更新頑張ってくださいね！ (2023年4月7日 21時) (
レス) id: 3b02df20c8 (このIDを非表示/違反報告)
詩月(プロフ) - 胡蝶蘭さん» 胡蝶蘭さん、感想とリクエスト有難うございます！お返事が遅くなりすみません…続編移行をした際に書かせて頂きますね！ (2019年9月16日 7時) (レス) id: 47903b2cc4 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶蘭 - 最後まで見ました！面白かったです！リクエストで、小烏丸と夢主の夫婦的行動みたいなのが見たいです！小烏丸が皆の父上なら平安組より前から生きてる夢主は母上なのではみたいな？（＞ｍ＜）☆ｵﾈｶﾞｲｼﾏｽ (2019年8月26日 2時) (レス) id: 1fa4972d94 (このIDを非表示/違反報告)
咲くや - 面白くて続きが気になります 更新頑張ってください。 (2019年5月27日 23時) (レス) id: 2369d330ed (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - 乱ってもしかして女の子の格好を禁止されてんなら女の子の服を持って土下座してでも「男の娘になってください！」って言うよ← (2019年5月1日 9時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩月 | 作成日時：2019年2月26日 3時
