35.熱涙 ページ6
おそ松side
お「責めんなって。」
A「…ッ、でも。
私が居なければ起こらなかったのは紛れもない事実…じゃん。綺麗事なんて要らないよ」
思わずAを強く抱きしめる。
その身体は微かに震えていて、今にもガクッと崩れ落ちそうな程細く、柔らかく脆かった。
Aの瞳には光が宿っていない。
先程の発言はきっと、自分の家庭環境と俺の家庭を比べてしまって出た言葉だと思う
しかしそれは至極当然だ。
俺だったら、もっと酷い言葉を投げかけてしまうかもしれない。
お「確かに綺麗事に聞こえるかもしんないけど…
例えAが家族に愛されていなかったとしても、俺はAの事が好きだから…
上手く言えないけど、卑屈になんなよ。
…俺が居るから」
A「……知ってる」
お「知ってるって…
何を?どういう風に?」
涙が俺のパーカーを赤黒く染めてゆく。
嗚咽を漏らすたびに伝わる振動が、何だか心地悪くて耐えきれずAの体をより一層強く抱きしめた。
A「家族に愛されてない事も…
おそ松だけは私を想ってくれている事も…知ってる。知ってるのに私は…
他の家庭が妬ましくて、何で自分だけ…
って比べちゃうんだ…
…情けなくて、最低だよね。」
最低?
最低だ。Aも俺も……
最低で情けないから、気が合うんじゃんか。
お「…俺も最低だから。
Aだけじゃない、理由は違えど俺も情けなくて最低な人間だから。
…一人じゃない」
A「ッ、う…
ごめん、ごめんなさい…」
言葉では形容し難い感情。
熱く駆け巡るような、感情的になるような…
暖かいけど冷たい。
しばらく俺たちは抱き合ったまま玄関で過ごしていた。
*
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作者名:小鳥遊未來 | 作成日時:2019年9月8日 13時