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毒を以て毒を制す/5 ページ21

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あの後、何事も無かったかのように、他愛のない話をして。いつもの通り接して、部屋に帰った筈だけれど。


「 んんん…… 」


フョードルくんに貰った指輪は矢っ張り無くなっていたし、起きた現在時刻はもうお昼。お酒に弱い上司は未だ泥酔していて。涎を垂らして気持ちよさそうだから起こさないでおこう。寝顔は、あの頃と全く変わらないのに、可愛い儘なのになあ。

ペットボトル飲料を適当に飲んで、鏡の前に立つ。何時もの私だな、なんて寝癖を撫で付けて考える。


「 あ、 」


でも、矢っ張り。否が応でも視線が、自分の唇の一点に集中してしまって。薄桃色のそれは、一寸開いてだらしない。

( __接吻、されてしまった、中也に )

じわりじわりと紅が頬を侵食していって、年相応の恥かしいなんて気持ちを私に思い出させる様で。はっきりと思い出せてしまう昨夜の出来事に、熱くなった両頬をぺちんと叩く。

ああは云っていたけれど、中也もきっと何かを間違えてしまったのだろう。今酔っ払って寝ているくらいだから、酔ってないなんてきっと嘘だったんだ。


「 ……気軽に、惚れた女、だなんて云ったら駄目だよ。私にはきっと、普通に恋する権利なんて無いんだろうから 」


中也に知られてしまったら。私が本当は、身を滅ぼす遣り方(、、、、、、、、)でしか仕事が出来ないこと。そんなことを沢山してきた私には、普通の人にある権利みたいな物が全て欠乏しているのだと思う。そう思わなければ、少し悲しくなってしまうから。と、少し下に視線を落とす。


__首に、違和感。
何時もの圧迫感が今日は無い。何時もと、違う。全然違う。


「 わ、私のチョーカーが、ない……! 」


声に出して愕然とした。ああ、どうしよう、本当に。怒られてしまう、本当に、どうしよう。



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「 もしもーし……嗚呼、A。私の番号は消したんじゃあ無かったのかい?まあいい、今日は心中日和だから…………ええ、つれないなあ。そんなに慌てて如何した。

うん、うん。…………ちぇー、面白くなあい。私との電話で他の男の話をしないでくれ給えよ、嫉妬するじゃあないか!

君にとっては、大事なものだもんねえ。私もそこの所は理解しているし、捨ててしまえなんて云えないさ。唯、私に電話をしてこなくても、誰が(、、)其れを持って居るかなら君も解っているだろう?

…………解らない?ふふ、今日の君は随分余裕が無いね。あー!真逆中也に何かされちゃったり…………ふふ、そんなに怒れるなら元気だよね、良かったよ 」



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「 」/0→←毒を以て毒を制す/4



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ねむい(プロフ) - kuroさん» こんにちは、本当にありがとうございます!とても励みになります!これからもどうぞよろしくお願い致します! (2020年1月24日 23時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
kuro(プロフ) - この先の展開がとても気になります!更新頑張ってください! (2020年1月24日 8時) (レス) id: f9572c4e12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年1月19日 23時

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