朦朧/3 ページ4
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__物凄い衝撃で、目が覚めた。
「 そろそろ抜け出さないと、危ないかもな 」
眠る前よりもヨコハマの街が近くなってきている。失敗した場合は私の恐れる通り、ヨコハマは消滅してしまうだろう。予め開けておいた牢の扉を出て駆け出した。
先程の衝撃は上部からだったから、きっと戦闘は白鯨の上で繰り広げられているのだろう。下に落ちたら大変なことになるから、中でやればいいのに。
「 っ! 」
__おじさまが、落ちていくのが、見えた。
あのままだと海に叩きつけられる。
頭がガンガンする。内側から声が聞こえる。高く明るい声、それでも悲痛に何かを叫んでいる。
ああ、私、日本語しか分からないから。でもそれはきっと、“お父さんを助けて”ってことだよね?
「 __おじさまっ! 」
異能が暴走している。操作しきれていない。怖い。
硝子を割って飛び出した、風が強すぎる。
「 カワバタ君 」
頭が痛い。何故か小型飛行機が近づいてきている。それが与える風が、私の体を攫って飛ばす。
「 __君に逢えて良かった 」
それでも、はっきり聞こえたその声に、頭の中の声は終に主張をやめた。そして寄り添うように、暖かくなる。
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「 うわああああああああ助けてええええええええ!やばいやばい本当にしぬ!!!!!!!! 」
小型飛行機の風で飛ばされたおかげで海に叩きつけられることは回避したが、このままの軌道で落ちるとヨコハマの上でクラッシュしてしまう。想像してしまったその痛さに、ぎゅっと目を瞑った。
ああ、死ぬのか、まだピチピチの19歳なのに。
____「 全く、テメェは俺にどれだけ心配かければ気が済むんだよ 」
走馬灯が見えた所で、下に引きつけられる力がゼロになる。
「 ちゅ、中也あ 」
「 死ぬ心算だった何て云わせねえからな 」
「 うええええぇ中也ああ、っう、えぇ 」
抱き留めてくれた安心からか、涙が止まらなくなってしまった。中也の腕の中で、久しぶりに子供みたいに泣きじゃくった。
「
「 ごめっ、中也、っごめんっ…… 」
「莫ァ迦、何時もテメェの悪巧みは筒抜けなんだよ 」
中也の黒い外套を物凄い力で掴んでいると、ぽんぽんと背中を叩いてから撫でられる。まるで子供をあやすみたいだった。
「 __頑張ったな、辛かっただろ 」
「 ……っう、 」
止まりかけていた涙が堰を切ったように流れ出した。大きな声をあげたら、少しだけすっきりした。
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ねむい(プロフ) - kuroさん» こんにちは、本当にありがとうございます!とても励みになります!これからもどうぞよろしくお願い致します! (2020年1月24日 23時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
kuro(プロフ) - この先の展開がとても気になります!更新頑張ってください! (2020年1月24日 8時) (レス) id: f9572c4e12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむい | 作者ホームページ:
作成日時:2020年1月19日 23時