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むらさきのそら ページ22





それから、夏が来た。


彼女が楽しみにしていた夏は、また病室で迎えられてしまった。ただ目の前の彼女は、煩い蝉の音すらも聞こえていないようだった。肌はしろいまま、ベッドと同化した。

アスファルトの上に彼女の明るい声は響かずに、焼け付くような暑さに長い睫毛を瞬かせることもなく目を閉じている。機械的な涼しさに身を包まれたまま、死んだように眠り続けていたのだ。









それから、季節が一つ回った。


葉が色付きだした頃、また病室に赤を連れてきた。

夕焼けのように真っ赤なその色に目を輝かせていた彼女は、未だ目の前で眠りこけている。読書の秋というものだから、眼鏡をかけて彼女の前で本を読んでみた。挑戦した“ 緋文字 ”はやはり難しくて、欠伸をしながらも目を開く瞬間を待った。










それからまた一つ、季節が回った。

「 メリークリスマス 」に答える言葉はなく、プレゼントを待つ子供のようにそわそわとすることもなく、完全に熟睡していた。確か例年よりも雪の降る回数が多く、彼女が起きていたら喜んだろうな と思った。夏と正反対な寒さにセーターの上から腕を摩って、読み終わった文庫本を枕元の聖書の上に置く。




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作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年4月25日 5時

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