遺言のような ページ5
，
「 …誰だ、おまえ？ 」
「 こっちの台詞です 」
「 どっちの台詞でもある！ 」
「 ふふ、まぁ、そうかも、 」
テンポの良い会話を繰り返して、自分すら砂浜に座り込んだ。砂が一粒一粒、波に攫われていく様子を伺ってから 彼に視線を戻す。
「 おまえ、学校は？ 」
「 今度こそこっちの台詞です 」
「 わはは、お互い様だな 」
よく見れば彼は、寝転んで何かを書き綴っているのだ。何を書いているのか と覗き込むと黒いオタマジャクシのようなものがうじゃうじゃと。
「 わっ、なにこれ 」
「 なにって、楽譜だ！ 」
「 だって真っ黒… 」
「 あ〜、やっぱりおまえもここの連符直したほうがいいって思う？そうかそうか、そうだよな〜… 」
全く話が通じない。けれど、何故だか笑えてきてしまう。思えば初対面の人とこんなに話せるのって、珍しいのだ。正確に言うと、初対面では ないのだけれど。彼は気がついているのだろうか。
「 あっ！その楽譜はまだ見ちゃダメ！ 」
「 えっ 」
伸ばした手を掴まれて遮られた。晒された右手首を見て心臓が跳ねる。嫌だ、お願いだから、見ないで。気がつかないで。
「 …ん？おまえ、この手首… 」
「 なっ、なんで見ちゃダメなの！ 」
彼の言葉に被せるように発した声は少しだけ強引だっただろうか、しかし どちらにせよ聞きたかったことだし。幸い彼は手首を離してくれた。
「 …この曲は、 」
「 うん 」
，
「 おまえに捧げる歌だから 」
，
「 私…？ 」
まさか、そんな訳。初めて話した人、ましてや遠くから見たことがあるだけの人が、私に なんて。
「 王さまー！？どこぉ！？ 」
「 あっ、セナ！ 」
銀色の美人さんと連れ立って帰って行く彼の背中を見ていた。見えなくなるまで、ずっと見ていた。喉の奥が、胸の奥が、焼けるように苦しいのだ。
それもこれも全部 彼が 気付いてたよ なんて言葉を残していくから。
，
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 108人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねむい(プロフ) - ONEさん» ひいいいそこまで言っていただけるとは本当に嬉しい限りです、、恐縮極まりないです…（？）この後も、どうぞよろしくお願い致します…！ (2018年1月9日 22時) (
レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
ONE - グッスン、グッスン(泣いてる、、) だぁぁぁぁ感動したぁぁぁぁ。何！？この悲しく切ないラブストーリーは！？。泣き過ぎて鼻水がでるぅぅぅ \( ^ ○ ^ )/オワタ。 (2018年1月9日 14時) (レス) id: c55778ed91 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - 鶴永ルアさん» とても嬉しいコメントありがとうございます。頑張らせていただきます。よろしければこの後も、宜しくお願い致します！ (2017年12月31日 14時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
鶴永ルア(プロフ) - 凄く感動しましたー！続きを早く読みたいです!!応援してます、更新頑張ってください(*´`) (2017年12月31日 14時) (レス) id: 51a0d5722b (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - 理音さん» ありがとうございます。細かい台詞まで、そして綺麗と言っていただき本当に嬉しいです。色々伏線立てまくってるのでよろしければこの後もよろしくお願い致します！ (2017年12月30日 12時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねむい | 作者ホームページ：
作成日時：2017年12月27日 21時
