アルフェラッツの傾慕【瀬名 泉】

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夢を見た。醒めてほしくなかった。



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「 …で、どんな夢だったんだ？ 」



「 …それが、思い出せないんだよねぇ 」



「 ま、そんなもんだろ 」



王さまが椅子の上で胡座をかく。おれが見た夢は宇宙人と会う夢だったんだ と。



「 そういえば、星がどうとかいう夢だった気がする 」



「 おぉー！おれと同じ夢だったかも！？インスピレーションが湧いてきたー！！ 」



「 多分違うから 」



俺が夢の中で会ったのは宇宙人なんかじゃなくて。彼女と満天の星だけが目の奥にこびりついている。




「 不思議だよな、夢ってすぐ忘れちゃうもん 」



「 …ほんとだよねぇ 」



もしかしたら七瀬Aと過ごした日々も夢だったのかもしれない。けれどそうじゃない とはっきり証明してくれるのは、この絵とモナ・リザ。端末の写真のフォルダにはいつの間にか彼女の笑顔が増えていた。




「 …どこにいるんだろうな、A 」



「 王さまみたいに海外をほっつき歩いてたりして 」



「 う〜ん、あり得る！ 」



王さまは机の上に寂しげに残された彼女の鉛筆を指で器用に回した。天才 というのは厄介な生き物だ と思うのはきっと間違っていない。




「 …帰ろっか 」


「 そうだな！ 」



まったく、絵を早く完成させる って言ったのはどこの誰だっけ。俺に抱き締められながら泣いたのはどこの誰だっけ。薄れていない、鮮明な記憶に胸を撫で下ろしながら、夢じゃなくてよかった なんて。




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