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「 ……いたい 」
「 ほら、凛月は凛月として生きてるんじゃん 」
だから痛いんだよだなんて告げた彼女はやっぱり表情を崩さずに次の言葉を紡いだ。頰を掠めた風は更に痛みを加えてくる。
「 凛月は凛月として生きてるから、だから痛いんだよ。なのに、そんな嫌いとか、そんなの無責任じゃん 」
「 何が、あんたの言ってること、何もわかんないよ 」
「 わかってるくせにさ、そうやって誤魔化すから、あんたは全部の言葉に責任を取れなくなるの。いい加減、 」
_____大人になってよ。
「 ……あんたの口からそんな言葉聞きたくなかったよ 」
「 いつまでも子供のままでいるつもり?私たちは離れてから、それぞれが大人になったの。“ あの頃 ”から、私は抜け出したの。青春時代に浸かったままでいるあんたに何がわかるわけ? 」
彼女は、なぜか悔しそうな顔をしていた。
それだけを、ただ鮮明に憶えている。
「 なんであんたがそんな悔しそうな顔するのさ 」
「 あのねえ、あんたは私の元カレ 」
「 ……わかってるけど、何、急に。 」
「 だから、私の元カレを、朔間凛月を悪く言わないで 」
こじつけみたいに、彼女は笑った。それはどうやら俺よりも幾分か大人になった彼女自身を表しているようだった。風が強く吹き始めて、あの頃を思い出すあたり、俺はまだまだ子供のままでいるのかな。
そもそも、他の子を好きになってあんたを忘れようとすること自体が間違いだった。そんなのわかってるけど、それ以外なかった。それ以外、この状況を打破する方法なんて存在しなかった。そんな地獄の中で、あんたが現れて、だから俺は天国をまた望んでしまう。
「 俺は、俺かなあ 」
「 だからさっきから言ってるでしょ。凛月が凛月じゃなかったら、中学の時私と契約したあいつは誰だったっていうの? 」
「 ……ちょっと後悔してるんだけどね 」
「 …は? 」
「 ううん、こっちの話。それにしても、あんたに殴られるなんてねえ。 」
「 ……そっ、れは…ごめん…でもそうでもしないと凛月は私の話を聞いてくれなかったかなあって 」
馬鹿だなあ。
俺は俺なのに、まだあんたが好きなままの俺なのに、何を変わろうとしてんのさ。でも、それが大人になるってことなら仕方ないのかもしれないね。
あんたにキスして大人になった。でもそれは恋愛小説とかに憧れてた奴の幻想で、俺はあんたを忘れられて初めて大人ってもんになれるんだろうな。
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フラッペ - ねむいさん» りっちゃんはいいですよね(^^)独特な雰囲気というか無気力で可愛らしいというか……でもライブではきちんとする所、好きです。更新の方は細かく繊細に書かれているのがねむいさんの作品の良いところですので、自分の思うがままに書いていただければ幸いです……♪ (2018年8月22日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - フラッペさん» ありがとうございます。フラッペさまからコメントをいただくたび、有難いという気持ちで胸がいっぱいになります。お気付きかとは思いますが、私も朔間凛月が一番の推しです。しかし推しほど書くのが難しい!精一杯尽くしていきたいと思いますのでよろしくお願いします! (2018年8月20日 10時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - 新作おめでとうございます(^^)推しのりっちゃんなのでとても嬉しいです……!!もう一話目で「好き」と口からポロりと出てしまいました。ホントにこの作品の続きがむちゃくちゃ気になります。ねむいさんの事応援してます♪ (2018年8月18日 21時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむい | 作者ホームページ:
作成日時:2018年8月15日 23時