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「………間違えた」
がやがやと賑やかな式場の外に出てみると、水を打ったように静まり返っているものだから なんだか落ち着かなくて履いていた革靴の踵を踏んだ。音を立ててベンチに腰を下ろすと長いことそこに腰を据えていた先客の知らないおじさんが煙草を差し出してきたから、無言で受け取った。
その後に再度無言で受け取ったライターで、手の中のものを燃やせてしまえたらどれだけ良かっただろうか。そんな勇気はなくて火をつけた後にライターを返せば、おじさんは俺の肩を軽く叩いて_____遅くなってもいいから借りは返せよという言葉が聞こえたような気がした_____ゆったりとした足取りでその場を去って行った。否、正しくは式場の中へと吸い込まれて行った。あの人には後ろめたいことなんて何もないのだろう、羨ましい限りだ。
ともかく、動き出さないことには何も始まらない。が、俺、朔間凛月はご祝儀の袋を皺ができるほどに握りしめたまま、吸ったこともない煙草を空いていた左手に持ってベンチに座り込んでいた。中にいる人間はきっと俺がいなくなっていることに気がついていない。最早蚊帳の外であるから、俺にはこのポジションがお似合いなのだろう。持っている煙草から煙が上がって、ちょうど風下にいたのでそれを吸い込んでしまった。けほけほと噎せると煙草は嘲笑うかのように煙を増した。これを吸い込む輩の気が知れない、だなんて、受け取ってしまったのだから同罪かもしれない。咳の原因を消してしまおうと、煙草を地面に擦り付けるが、刻印のように跡がついてしまい、それもなんだか気持ち悪くて嫌になった。
「あれ、もしかして」
_____艶のある黒髪の女が、首を傾けてこちらを覗き込んでいた。目は大きすぎるほどに丸くて丸い。唇は熟れた果実のように紅くぷっくりとしていて、美人、と言いあらわせるような女だ。ひとつ不思議なところは、服も_____周りの女たちは、黄色のパフスリーブとか、ピンクのオフショルダーのドレスとか、そんな服なのに。その女は、黒いドレスを身に纏っていた。これはこれでありなのかもしれないが、結婚式では目立ちすぎる。周りに馴染めず、抜け出してきたのかもしれない。
「朔間くん、だよね」
「は？」
「あー、覚えてないならいーの」
「…はぁ？あんた誰」
はは、と準備したような笑顔を、その女は浮かべてみせた。見透かされているようで、
「ねぇ、朔間凛月くん。あなたは、無気力にはなれるけれど、一度放った言葉に無責任にはなれないよね」
気持ち悪くて、手の中の蝶々結びがプリントされた袋を握りしめた。
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フラッペ - ねむいさん» りっちゃんはいいですよね（＾＾）独特な雰囲気というか無気力で可愛らしいというか……でもライブではきちんとする所、好きです。更新の方は細かく繊細に書かれているのがねむいさんの作品の良いところですので、自分の思うがままに書いていただければ幸いです……♪ (2018年8月22日 1時) (
レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - フラッペさん» ありがとうございます。フラッペさまからコメントをいただくたび、有難いという気持ちで胸がいっぱいになります。お気付きかとは思いますが、私も朔間凛月が一番の推しです。しかし推しほど書くのが難しい！精一杯尽くしていきたいと思いますのでよろしくお願いします！ (2018年8月20日 10時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - 新作おめでとうございます（＾＾）推しのりっちゃんなのでとても嬉しいです……!!もう一話目で「好き」と口からポロりと出てしまいました。ホントにこの作品の続きがむちゃくちゃ気になります。ねむいさんの事応援してます♪ (2018年8月18日 21時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねむい | 作者ホームページ：
作成日時：2018年8月15日 23時
