よりどころ ページ16
「A、こっち来て」
食事を終えた夜。
テレビを見ていると、隣に座る悟さんに腕を引かれた。
腰を抱かれ、流れるように膝の上に乗せられる。
「わっ！？えっ何ですか」
外さないでと頼んだアイマスクだが、着用していても状況が状況なだけに恥ずかしいのには変わらなかった。
そんな私の気もしれず、彼は懐に顔を埋め、きつく抱きしめた。
「悟さん…？」
返答はない。抱き返すべきかと空いた手は行き場をなくし、浮いたまま静止した。
しかし、弱々しく項垂れた体があまりにも哀愁的で、ゆっくりと腕を回す。
仕事でひどく疲れたのだろうか。
彼はくっつくのが大好きで、くつろいでいる時や寝ている時は、必ずと言っていいほど私に触れる。
きっと彼も不安なのだろう。
唯一の心の安らぎは、もしかしたら私だったのかもしれない。
なのに、そんな私も記憶喪失で、今まで通り甘えようとしても拒絶されて。
そう思うと、なんだか…。
「ごめんなさい。思い出せなくて」
再びの沈黙。
「悟さん、私ね、思い出したいの」
「…」
「病院に行きたい」
「は？」
パッと上がる顔。
何か意外なことを言ってしまったのだろうか。
だって、記憶喪失だと知ったなら、普通なら病院へ行くのが一般的な常識ではないのか。
きっと仕事が忙しくて、病院へ行く予定が合わないのだと思っていた。
一人で病院へ行くのも手だが、あの�猝鸞��瓩�ある限り、それも叶わない。
でも、彼の反応から察するに、どうやら違っていたようだ。
「なに、病院？」
「え…？」
「病院ってことはさ、センセーと話すってこと？」
「う、うん…症状とか伝えなきゃ」
「目とか合わせんの？」
「悟さん…？」
「体とか触んの？」
「いっ…！」
横脇の骨に、彼の指が食い込む。
鈍い痛みが走り、顔を歪めた。
「ねぇA。僕以外にそんなの許すの？」
「悟さっ」
「僕そういうのムリ。Aが他の人と話すとか」
「…うっ、ごめんなさい」
喰い込んだ指の力が緩まる。
その部分を撫でながら、彼も「ううん、ごめんね」と優しく返した。
「記憶喪失って不安なことだらけだよね」
「そう、だね…」
「でもさ」
アイマスクを取ると、青い目が私を捉える。
「思い出したいなら、僕に聞けば良くない？」
「…」
「怖がらないでよ。何でもするからさ。」
どうして、こんなにも歪んでいるのだろうか。
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松野星月(プロフ) - コメ失礼します！わー、心に来る。続きがますます気になりました！楽しみに待ってます！ (2023年5月4日 16時) (
レス) @page37 id: 7e5eb61c5c (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します！すごく面白かったです！質問なのですが,この作品は完結でいいのですか？内容的に途中だと思うのですが…もし,続きを書く予定があるのなら続きみたいです！更新頑張ってください(^^) (2023年3月21日 14時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 一般タコピーさん» 返信遅れてごめんなさい！コメントありがとうございますっっ！！身に余るお言葉ですがめっっっちゃくちゃ嬉しいです(/Д`;💕︎ 不定期になってしまいますが、更新頑張ります！- ̗̀( ˶^ᵕ'˶)b (2022年12月19日 13時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
一般タコピー - 神作品だ！作者様の文才が素晴らしくて一気に読んでしまいました！更新頑張ってください！ (2022年12月15日 18時) (レス) id: e79aa4edc0 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - あさん» 嬉しいです！！ありがとうございます！私も好きです！！！(唐突) (2022年12月13日 17時) (レス) @page36 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のんのんた | 作成日時：2021年10月4日 4時
