私が帰る場所【skt】

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お母さんが死んだ日のことは一生忘れない



朝、いつも通りに家を出たお母さんの「行ってきます」



お母さんは私よりも早く家を出て仕事に行く人だった



それを私とお父さんが見送る、そんな毎日



お父さんとお母さんは家を出る前は必ずキスをしていて、それが恥ずかしい反面微笑ましかった



あれが最後なんて誰が思うだろうか



お母さんのお葬式で、お父さんは泣いていなかった



あれだけお母さんのことを愛していたのに


号泣している私の肩をただ叩くだけ


何も慰めの言葉もなくて、その時はそれが優しさだと思ってた



でも…………違った




「A、お父さん再婚するから」




その衝撃は多分もっと忘れない



『さ、再婚...？誰と...』



「今交際してる人が居てね、その人と結婚することにした」



まるでお母さんなんていなかったみたいに


お母さんが居なくなった痛みなんて微塵も感じていないみたいに



幸せそうな笑顔を浮かべてそういったあの人



『お母さんが亡くなってまだ数ヶ月だよ？


もう再婚とか言い出すの！？いくらなんでも切り替え早すぎるって！


お父さんは……お母さんが死んだこと悲しくないの？


あれだけ愛してたじゃん！』



子供ながらに必死に訴えた



でもあの人の目にはお母さんなんて映っていなかった



「お母さんが亡くなったのは悲しいよ


当たり前だろ


でもな、俺が悲しんでた時に彼女はずっと隣にいてくれたんだ

献身的に支えてくれた。だから俺は今も生きていられる」



気持ち悪い



お母さん以外に恋してる父親なんて見たくない



反射的にそう思った



『私は認めない』



「Aに認めて貰わなくてもいい」



『結婚してどうするの？』



「この家で一緒に暮らす」



『やだ！』



お母さんがまだいるの


お母さんの部屋も、亡くなった日のままなの



服だってアクセサリーだって仕事道具だって何一つ捨てられていないのに


そんな空間を見知らぬ人で埋めないで

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