居心地のいい場所とは (ページ39)

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相葉さんページ39

相葉side

朝っぱらから玄関を乱暴に叩く音
もう聞き慣れたと言ってもいいその音ですぐに目が覚めてしまって憂鬱な日になりそうだと思った

部屋を出てうるさい玄関を勢い良く開けると遅えんだよって吐き捨てて勝手に家に入ろうとする男

…………俺の親父だ。

俺は進もうとする親父を引き止め行く手を塞ぐ

「どけ。邪魔だ」

「何しに来たんだよ。」

「ﾁｯ……お前にはかんけぇねぇだろ」

「かんけぇねぇ事ねぇだろ。どうせ金だろ？」

「悪いか？」

「面倒くせぇなぁ。ねぇよ。一銭も。さっさと帰れ」

…………まただ。

親父の顔がどんどん狂気を増すのがわかる。
怒鳴り散らす前にドアを閉めようとしたが間に合わなかったようだ
もうこうなったら当分止まらない

「ねぇわけねぇだろ！！」

ほらな。

またそうやって、怒鳴るんだ。

でも今の俺はあのときとは違う。

「お前にやる金はねぇっつてんだよ！！」

あのとき、こうやって言い返せてたらもっと…。

底まで響くドスの効いた怒鳴り声は何度聞いても変わらない。
思い出しちゃうんだ…この声を聞くと……。

怒鳴るだけではとどまらない怒りはまたドアを叩く
大声を上げるたびに右の拳を振りかざす

そういうところも何年立っても同じなんだな。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

しばらく言い合いが続いて、もう埒が明かない……そう思ったとき

「相葉ちゃん」

「…………おおちゃん…。」

柔らかな表情のおおちゃんはこちらへ近づいてきて俺をおおちゃんの後ろに誘導した
されるがままの俺は黙っておおちゃんに従う

親父をしっかりと見つめるおおちゃん

「なんだよ」

「…いくらですか？」

「………っえ？」

思わず間抜けな声が出た

「いくら必要なんですか？」

「ちょっとおおちゃん…」

「黙ってて。」

こちらを振り返らずに真っ直ぐ親父を見てそう言った

「…とりあえず30万」

「っ！またそんなっ！！」

「分かりました。ちょっと待っててくださいね」

「っえ、ちょっ、おおちゃん！」

くるりと振り返ってリビングに向かうおおちゃんを引き止める

「なに？」

「なにじゃなくて……渡すつもり？」

「うん。だってそれしか帰ってもらう方法無くない？」

「っそう……だけど…」

「今度こそ、最後だよってちゃんと伝えてね」

ニコッと笑ってメモ帳に口座番号を書いた

「まってまって、流石に口座番号書いたら…」

慌てる俺に近寄って

「Dummy…」

笑顔を見せた