【銀魂】嘘と林檎

18 side土方 ページ20

俺が見たのは
天人の群れとその中心で血にまみれ刀を振るう人物
その人物の周りには天人の亡骸が転がっている

天人の数は見る見るうちに減っていく
そしてもう数える程しかいない

目を見張るのは
その人物の恐るべき強さ
烏面を付けていて顔は見えない

知っている。
俺はコイツを知っている。

攘夷戦争の時に見た
この剣の動きを。この体の運びを。

コイツは[屍姫]？本物か？

何でここに？！



その時

天人の持っていた棍棒が
烏面の人物を狙う

辛うじてかわすが面に当たったようだ

面が、割れる
顔が、顕に







あれは…………A？！

いやいや、嘘だろ
でもあれは…


面が割れても烏面の人物は
身の丈ほどの刀を手足のように振り回す

よく見ると全身傷だらけで血塗れだ
もはや足取りはフラついていて
気力だけで立っていると言った方が正しい

頭がついて行かず動けない

その時、その人物は最後の天人を、切り捨てた
と、同時に立ったまま動かなくなる



そこでようやく俺の足は動き出す

本当にAなのか？
あの、お人好しでひ弱なあいつが？[屍姫]？

天人の亡骸を跨ぎながら
少しずつ距離を詰める
次第に見えてくる顔は、正しくAだ。


残り2ｍ

「オイ、お前は…！？」

急に人物は倒れ込む

咄嗟に体を支える


「おい、オイ！大丈夫か？！……！！」


泣いてる？


見れば涙を流している

『、ありゃ、見られちゃった…はは』

力なく笑うのを見るのが辛い

「お前、本当にAなのか？！どうしてこんな」

『どう見ても私だよって、髪切ったから分かんないか？…ゴホッ』

「それよりも早く手当てを」

『だめ！』

「は？何でだよ！ボロボロじゃねぇか！」

『お願い、大丈夫だから。』

「……分かった。」

『ありがとう。…あれ？可笑しいな？涙が』

「っ！」

思わず抱きしめる

血だらけでボロボロ
例え強くても女は女
どれだけ強がったって怖ぇもんは怖ぇ。

「なぁ、A、話したくなったら話くれぇ聞いてやる。よく分からねぇが言えねぇ事情でもあるんだろ？今は胸貸してやるよ。」

『やっぱり、土方さんにはかなわないや……ぅっうゎぁぁあぁあん！！怖かったぁぁああ！』




いつも花見てぇに笑ってたコイツを
ここまで追い詰めたのは誰だ？

何も知らなかった自分に腹が立つ

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