ハローエフェクト前編 (ページ17)

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「ほほう…渡辺さんのどこら辺がいい人だと思うの？」

続いてそんな声が聞こえて
文脈的に岩本が俺の事をいい人だと言ったようだった。

「なんだよ、それ…。」

壁に背をつけたまま体育座りをして
顔をうずくめるように俯いた。
今の俺はたぶん顔が赤い、いや絶対赤い。

顔を勢いよく上げて火照っていく頬を両手で触れると
頭の中を整理しようと目を閉じた。

「…いやいや、パニックパニック！」

このままじゃダメだとトイレに駆け込み
頬の赤みが取れるまで顔を洗っていると
せっかく早く出社したのに始業時間になっていた。

「…。」

「…。」

こいつ、俺の事いい人って思ってるんだよな。
自分で言うのもなんだけど
わりと怖いところを見せてきたはずなのに。

ぼーっと考えながら岩本を眺めていると
いつの間にか目の前に顔があった。

「うわっ！！」

「…。」

オドオドしながら壁掛けの時計を指さされ
そっちに目を向けるといつの間にか昼休憩の時間で
心拍数を抑えるために胸に手を当てて
冷静を装い立ち上がった。

「…なに。」

「…。」

「お前も昼階に行くの？」

財布を両手で持ち
俺と一緒に会議室を出ようとしている。
このまま一緒にいるとなんだか自分がおかしくなりそうで
両手で肩を掴んで強引に席に座らせた。

「お前ここで待ってろ！
　…おれが、なんか買ってくるから！」

そう言い残して会議室を出ると
その場にしゃがみこんでしまった。

「ありえねぇ。」

あの会話を盗み聞きしただけ
何で俺はこんなにてんぱっているんだ。

頭を何度も振って頬を軽く叩くと立ち上がって
とりあえずコンビニに向かい二人分の昼食を買った。

会議室に戻ると岩本は恐る恐る俺を見た。
適当に買ってきたサンドイッチとジュースを差し出すと
さっきの怯えたような顔は一気に笑顔になって
俺の顔はまた一気に熱くなった。