ハローエフェクト前編 (ページ16)

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＿Watanabe side＿

「あんた絶対Aちゃんに優しくしなさいよ。」

「俺はいつだって自分なりに優しくしてるよ。」

「はぁ？！」

朝一番から早見の声が頭に響く。
俺はこいつが大の苦手だ、
ていうか会社の人間は基本嫌いと言ってもいいぐらい。

「まあまあ！
　渡辺さんあとはよろしくお願いします！」

佐久間とかいう新しく入ってきた社員が
早見の背中を押してオフィスを出て行こうとした。
でもすぐ動きが止まって
駆け足で岩本の前に駆け寄ってきた。

「Aちゃんも、頑張ってね！」

メモに書いて伝えるのに
なんでわざわざ声に出して読み上げるのか。
意味わかんねぇけど
なぜかこいつに嫌いという感情は湧かない。

「…。」

「今日も笑顔が可愛い！！」

思考ダダ漏れなところはあるけど
他の奴らに感じる嫌悪感はこいつにはなくて
岩本はそんな佐久間に笑顔を浮かべていた。

「行くぞ。」

「…。」

声をかけて先に歩き出すと
少し経ってから駆け足で追いかけてきた。
ハムスターが回し車を走るときと同じ足音で
何だか歩くリズムがくるって
無意識に岩本の歩幅に合わせて歩いてしまう。

「…。」

「…。」

2人で企画を進めるわけにもいかないから
今日は使えそうな資料を黙々と集めていく。

今朝、なんだか落ち着かなくてはやめに出社すると
岩本と佐久間が二人で何かを話していた。

「渡辺さんの事、怖い？」

佐久間がそんなことを言い出して
分かりきった答えを聞くあいつにむかついて
いったん会社を出ようとオフィスに背を向けた。

「え、それはライクの方？ラブ？」

「は！？」

佐久間のそんな声が聞こえて転んでしまい
思わず出てしまった声を口に手を当てて抑え込んだ。
幸い2人には聞こえていないようだけど
腰が抜けて立つことができず
とりあえず廊下の壁に背中をつけてもたれかかった。