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「なんでですか？！」
「今回の企画に興味を持ってくれてる会社があって
佐久間は営業の経験がないから
慣れてる早見さんについて行って勉強してきてもらおうかと…。」
「渡辺と佐久間で行けばいいじゃないですか！」
早見さんが舘さんと言い合っている時
Aちゃんと向かい合って座っていた渡辺さんが
立ち上がってテーブルに両手をつき身を乗り出した。
「明日！俺と二人で仕事だってよ！」
大きな声と口の動きでそう言うと
Aちゃんは案の定固まってしまった。
「あんたねぇ…。」
「まあまあ落ち着いて！」
また喧嘩になりそうな空気を察して
急いでメモに書いてAちゃんに見せると
何度も首を縦に振った。
「ほら、本人が頷いてんだから
お前は文句言わずに外回り行けよ。」
「あんたのそういう態度がホントにむかつく！」
2人はまた言い合いになってしまって
今度は舘さんがやんわりと止めに入っている。
さっきまで呑気に考えていたけど
いつかこの言い合いに油を注ぐようなことを言ってしまいそうで
段々と不安になっていった。
「…ん？」
「…！！」
「Aちゃん？」
服の裾を引っ張られて隣を見ると
いつの間にかAちゃんが座っていて
俺のメモ帳に可愛い犬の絵を描いた。
「ふふ、可愛い。」
その犬の横に吹き出しを描いて
小さな文字で元気出してと書き足された。
Aちゃんに視線を向けるとニコニコ笑っていて
俺が慰められてどうするんだと気分を奮い立たせた。
「ありがとうAちゃん！
お礼のハグ！！」
そう言って抱き着こうとすると
また後頭部に、今度は三つの衝撃が走って
後ろを振り返るとさっきまで言い合っていた2人と
それを止めに入っていた舘さんが手をグーにして振り上げていた。
「ハグは挨拶ですよ！」
「江戸川区にそんな習慣はないよ。」
舘さんに正論で返されて
早見さんの顔は笑っているけど口角がぴくぴくしている。
そして渡辺さんは
やっぱり何を言うわけでもなくただただ怖い顔で
ちらっと隣に座るAちゃんを見ると
この光景を見て楽しそうに笑っていた。
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年3月7日 18時
