【d!】キルミーベイベー！【kn】 (ページ10)

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アスファルトの上を踏むたびに、雨水が飛び跳ねて足がじわじわと濡れていくのを感じる。
しかし、そんなことは今の私にとっては大した問題ではない。何故なら、隣を向けばビニール傘の向こう側に、ココアの飲み口に口を付けるコネシマくんが見れるのだから。

横断歩道の信号の色は赤色。
私たちは白黒な線の前で足を止めた。

ふと、私はコネシマくんの脇に抱えられている水を含んだ学ランに気が付いて声をかけた。

『学ラン、そんな状態じゃ明日着れなくなっちゃったよね…』

今日は一週間の内でまだ木曜日だ。勿論、明日も通常通りに学校はある。コネシマくんは学ランをチラリと見ると、「一日くらいなら無くても平気やろ」と言った。

『平気じゃないよ！』

自分でも想像した以上に大きい声が出てしまって、正直びっくりした。コネシマくんも私を見ていた。
なんだか急に気恥ずかしくなってしまって、誤魔化すように私は自分の着ていたパーカーを脱いで、コネシマくんに押し付けるようにして渡した。

『学ランは土日のうちに私がクリーニングに出しておくから、コネシマくんはその間代わりにそれ着てて！』

「……はぁ？」

コネシマくんがそう言いたくなる気持ちもわかる。私自身も、全て自分でやっておきながら、この行動に理解が出来ていない。

『サイズなら大丈夫、それ大きめの買ったから！』

「気にするところそこやないと思うんやけど」

信号の色が青色に変わった。
それを機に私は、パーカーを返そうとするコネシマくんに見ない振りをして、先に一歩前に出た。コネシマくんも渋々という形で私の後に着いてくる。

『ねぇ、コネシマくん』

歩きながら後ろを振り返って、いつものようにコネシマくんの名前を呼んだ時、信号が赤なのにスピードを落とす気配もなく、今コネシマくんがいる場所へと向かってくる車が視界に映った。
どうやらコネシマくんはそれに気がついていない。

このままだと、コネシマくんが…！

『危ないッ！！！』

私は咄嗟にコネシマくんの腕を掴んで、自分の方へと強く引いた。すると必然的に、私がコネシマくんのいた場所へと変わることになる。ここまで何も考えずに、気づけば体が勝手に動いていた。

コネシマくんは私の必死な様子に最初はよく分かっていなかったが、すぐに車の存在に気がついたようだった。

「ッA！！？」

コネシマくんが私の名前を呼んだ時には遅かった。

私は身体に強い衝撃を受け、意識を手放した。