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聞いた事のない樹音先輩の荒い口調に、Aの上に出来ていた無数の影はサッと無くなり彼だけがAに影を落とす。
そして、彼はAの姿に瞬間眉をひそめそのまま身体を救いあげた。
「みんなは練習続けて。シュント、あとよろしく」
「おう」
静まり返った空間に彼の声とシュント先輩のぎこちない返事が響くと少し間を置いて甲高い奇声が館内を埋めつくした。
「ちょっと何あの女？あんなの大した事ないでしょ！」
「樹音先輩から離れてよ！」
上から落ちてくる敵意に満ちた声と視線にAはハッとして自分の置かれた状況をやっと把握した。
これは俗に言う『お姫様抱っこ』
痛みと恥ずかしさと表現のしようのない感情が胸の中に渦巻いて、Aは両手で突っ張るように彼の胸を押した。
「歩けますからっ、降ろしてください、」
「落ちたいの？じっとしてて」
怖いくらい澄んだその声はAの背筋をゾクリとさせる。
見上げたその顔はいつもの涼しい笑顔ではなくて冷たいと感じるほど真面目な表情。
彼は足を止め、上にいるギャラリーにその冷たい顔のまま視線を向けた。
「静かにできないなら出て行ってくんない？」
こんなに冷たい彼の台詞は初めてかもしれない。
彼女達が一瞬で顔色を変え押し黙ると、彼はAを抱きかかえたままあの涼しげな笑顔を見せ「いい子」と言葉を残し体育館を出て行った。
右ひざの痛みに呼応するかのように心臓がドクンと脈を打つ。
Aはそれが少しでも和らぐように何度も右手で右ひざをさすった。
これ以上酷くならないように、彼にこの鼓動が伝わらないように。
ガラリと開けられた保健室。
「先生いないみたいだね」
そう言いながら降ろされたのは真っ白なベッド。
そのちょっとした振動で痛む右ひざに顔を歪ませると、彼は少し切なそうにAの顔を覗き込む。
「ひざ、どっかにぶつけた？」
心配そうにそう聞いてくる彼にAは首を振る。
「咄嗟だったから右足に体重かけちゃって、」
ぶつかってきた彼の重みも右足で受けてしまった。
そう言って長い指がAの右ひざに触れようとしてAは思わず後ろに下がり身構えてしまった。
だってここは保健室のベッドの上で、相手はあの『樹音先輩』
そんなAの姿に彼は少し寂しそうにクスリと笑う。
「嫌がる子には何もしないよ」
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あいうえお - 解釈不一致なのに新しい道が開けたっていうか全て星様の文才によるものというか、ほんと面白いです、これからも応援してます！！！ジュノンくん最高！！！！！ (5月23日 21時) (
レス) @page1 id: 4e657aa584 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - 天才すぎます、ありがとうございます、読み続けます、、、、 (5月23日 21時) (レス) @page1 id: 4e657aa584 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 最近の中で一番好きな夢小説です、！ (5月22日 23時) (レス) @page35 id: 7c9597bb9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星 | 作成日時：2023年5月18日 20時
