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その声は嫌味なほど澄んでいて。
Aは身体を強張らせた。
「マネージャーじゃなくて、十分選手としてやってけそうだけど」
「そんな事ないです。ボール片付けますね」
そう言ってボールを取ろうとすると長い指が邪魔をしてAより先にボールを掴むと、それをAの前に差し出す。
「もう一回やってみてよ」
「…嫌です。片付けますから」
目を合わせることなくそう言ってAはボールに手を伸ばした。
「右ひざ」
Aの手が宙で止まる。
ゆっくりと上げられる顔はひどく驚いていて、その瞳が彼を捉えた時、彼は「やっぱり」と小さく呟いた。
「…なんで？」
誰にも言ってない。
体育だってちゃんと受けてるし普通の生活でバレるなんてありえないはずなのに。
「普段立ってる時も、体重をかけるのはいつも左。さっきのレイアップも踏み切りは左。歩き出すのはいつも右なのに。」
彼の声がどんなに澄んでいても、その顔がどんなに涼しげでもAは驚くことしか出来ない。
「そして不安なことがあった時は右ひざを撫でてる」
そんな彼の観察眼に声を発することも出来ずにAは立ち尽くしていると、彼は困ったような笑みを浮かべてAの頬を撫でる。
「ごめん。誰にもバレたくなかった？」
彼の手を暖かく感じるのはどうしてなんだろう。
「…別に隠してたわけじゃないです」
その手から逃れたい気持ちと触れて欲しい気持ちが交差する。
バスケがやりたくて、ボールに触れたくて。
それが叶わないからマネージャーになってコートの外からボールを弾む音を聞く。
そしてこの手はあのオレンジのボールを自由自在に操るのだ。
それがどれほど羨ましくて、妬ましくて。
恋焦がれて。
「泣かないでよ」
この声でそんな事を言われると誰だって泣きたくなる。
そう思っていると彼の親指がAの涙を絡め取った。
「どうしたら泣き止んでくれるの？」
どうやったってその原因を取り除くことなんて出来ないことを知っているからAは小さく首を振る。
そんなAの姿に彼は目を細め手の上からボールを落とすと、館内に力なく弾むボールの音が響き渡った。
その音は余計Aの心を締め付けて、涙は止まらない。
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あいうえお - 解釈不一致なのに新しい道が開けたっていうか全て星様の文才によるものというか、ほんと面白いです、これからも応援してます！！！ジュノンくん最高！！！！！ (5月23日 21時) (
レス) @page1 id: 4e657aa584 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - 天才すぎます、ありがとうございます、読み続けます、、、、 (5月23日 21時) (レス) @page1 id: 4e657aa584 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 最近の中で一番好きな夢小説です、！ (5月22日 23時) (レス) @page35 id: 7c9597bb9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星 | 作成日時：2023年5月18日 20時
