佰参拾肆 ページ6
「<ヨハネ伝>第十二章二十四節。見掛け通り博識だな、A……真逆、貴君が先に来るとは思わなかったが」
樫の扉を前にジイドは立っていた。
罠もなく、部下もなく、構えもない。
私の照準はぴたりと敵の眉間に据えられている。
ほんの少し人差し指に力を込めれば、弾丸が狙った場所に突き刺さるだろう。
薄笑いを浮かべるその男の額、そのど真ん中に。
「ご足労、感謝するよ。……眼帯は意図的に付けていたんだな」
私は狙いをつけて拳銃を撃った。
頭を振って、
__成程、異能が効くようになってしまったのか。
「提案を放棄し、おまけに子供達には申し訳ないことをした」
ジイドは表情を変えず、再び同じように歩き出した。
「だがその価値はあったようだな」
そうだ。私はあの日、此処へ提案をしに来た。
ジイドが望む未来__つまりは“作之助さんとジイドが戦う様に切っ掛けを与え、此処へ連れて来よう”と、任せて欲しいと提案したのだ。
然しそれは破られた。
既に子供達の情報は
壁に沿うようにジイドが歩く。
それを追って、私の銃口も水平に追随する。
私は敵の頭部を狙って再び撃った。
次はジイドの回避方向を異能で右と予測し、弾道をわざと右にずらして撃った。
だがジイドは頭を逆、左側にそらせて回避した。
「貴君の目は乃公と同じだ」
ジイドは閉じる必要の無くなった私の目を見て、薄笑みのまま音もなく歩き続ける。
「乃公や部下と同じ、生存の階段から降りた目だ」
ジイドは武器に手をかけない。
私が撃っても警戒する素振りすら見せない。
背筋に冷気が伝う。
「ようこそ、A。乃公達の世界へ」
ジイドが何の前触れもなく二挺の銃を抜き、私のほうに向けた。
私がその一瞬の動作に反応できなかったのは、驚いたからではない。
──撃っても当たる気がしなかったからだ。
銃を向け合ったままお互いに静止する。
私の銃口がジイドを見詰める。
ジイドの銃口が私を見詰める。
「貴君では乃公を解放する事は出来ない。そう思っていたが、違ったようだ。貴君の情報を手に入れた……貴君も未来予見の異能持ちだったのだな」
『……お喋りな男だ』
「ではお喋りはこのくらいにしよう」
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黒龍(プロフ) - ハリネズミの毛玉さん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!皆様のお陰で完結する事が出来ました!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - ちょこれーとさん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!そう云って貰えると迚も嬉しい限りです!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミの毛玉(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: 9b2a72a438 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても面白い作品でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - マーシャさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います!不定期にはなりますが更新頑張ります!! (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2020年1月23日 2時