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佰参拾弐 ページ4

映像が見えた。
左側に並ぶ大窓から、兵士達が大挙して降下強襲(ラペリング)してくる映像だ。
私はまだ床に這いつくばったままだ。
反撃できる体勢ではない。


突入までの時間は四秒程度。
一か八か、拳銃を拾い上げようともがく。


右腹に鈍痛。
先程の爆発で放射された散弾が、防弾ベストで守られていない腰骨近くの肉を抉り取っていったのだ。
襟衣に血が滲んでいる。


窓の向こうに、上方から垂れ下がったロープ、そして降下してきた兵士の靴裏が見えた。
私は呻き声をあげながら拳銃を拾い上げた。




窓が残らず割れた。
上方から飛び込んできた兵士達、その数八人。
遮蔽物に隠れている暇はない。


砕けた硝子が空中を舞った。
その破片のひとつひとつの輝きまで見えるようだ。



まずは左右の銃で二発。
先頭の二人の胸を撃ち抜いた。
残りの兵士が床に着地する。


コートの裾を翻しながら私は半回転し、低い姿勢で二発。
間近にいた兵士二人も撃ち抜いた。


残りの兵士がこちらに銃を構えた。
硝子の破片がようやく床に落下し、さらに無数の光となって跳ねた。



そして銃火が解放された。
ほとんど殴り合うような距離での銃撃戦。
閃光が室内を満たし、世界を真っ白に染め上げた。
輝く世界の中を、極小粒の死の使徒が飛来する
私にはそれが見えた。



ほとんど至近距離から放たれた弾丸を、躰をほぼ水平に倒して回避した。
両手を交差して左右の銃で二発。
胸を天井に向けるほど体を反らして左右の敵に二発。
胸に衝撃を受けて躰が跳ねた。
防弾ベストに弾丸がくい込んだのだ。
鉄球を叩き込まれたような衝撃に呼吸が止まった。



一人撃ち漏らしたのだ。



硝子だらけの床に手をついて転倒を回避した。
さらに短機関銃を撃とうとする敵の足を、私は素早く払った。
兵士は倒れながらも手を伸ばし、私の外套の襟を摑んだ。
一緒に倒れ込む気だ。
今までの敵とは動きが違う。


軍服の胸にちらりと襟章が見えた。
おそらくミミックの副司令官、ジイドの腹心の幕僚長だろう。



左手の拳銃で胸を狙おうとしたが、短機関銃の先端で素早く銃を払われた。
私と副司令官はもつれあって床を転がった。


私は脳震盪を狙って、副司令官の顎に左の掌底を叩き込もうとした。
だが回避された。


左手の袖を摑まれ、背中側に回られた。
肘と手首を捻り上げられる。
関節技が敵の狙いだ。
肩で鈍い音がした。

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黒龍(プロフ) - ハリネズミの毛玉さん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!皆様のお陰で完結する事が出来ました!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - ちょこれーとさん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!そう云って貰えると迚も嬉しい限りです!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミの毛玉(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: 9b2a72a438 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても面白い作品でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - マーシャさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います!不定期にはなりますが更新頑張ります!! (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2020年1月23日 2時

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