佰伍拾漆【終章】 ページ29
抗争は終結し、街は嘗ての活況を取り戻した。
表面上は街は抗争の前と何も変わらない様に見えた。
経済は回り、人々は起きてまた眠り、昼の活況と夜の暴力が繰り返された。
表の社会も黒社会も何も変わらない様に見えた。
*
海岸線を見下ろす上空をプロペラ推進の軽飛行機が飛んでいた。
飛行機の中には数名の乗員しかいなかった。
「後一時間程で次の任務地となる着陸地点に到着します」
乗客席で背広を着た若い男が話しかけた。
「ああ、判った」
窓辺のリクライニングシートには丸眼鏡の男が座っており、手に持った数枚の紙片を熱心に見詰めていた。
「……坂口捜査員。その写真は次の
若い背広の男が話しかけた。
丸眼鏡の男_安吾は、慌てて写真を服に仕舞った。同僚から隠す様に。
「いいや何でもないよ。プライベートの写真だ」
写真を仕舞うと安吾は視線を窓の外に向けて、眼下の都市を物憂げに眺めた。
*
この抗争の終結の場である洋館は相も変わらずひっそりと静かに佇んでいた。
その洋館の中にある舞踏室には赤銅色の髪の男が居た。
男は何をする訳でもなく、ただ立っていた。
「……ジイドと仁は親爺さんの所で働く事になった。一応俺も手伝っている」
男は長年止めていた煙草を箱から一本取り出し、
「そう云えば、お前が子供達に頼んでいた物が昨日の早朝に届いたぞ。俺には勿体無いぐらい素敵な物だった」
Aがあの日、子供達に頼んでいた物。
それは万年筆と写真立てだった。
小説を書く上で必須と云っても過言では無い万年筆と、海が好きな赤銅色の髪の男_織田の為に子供達が旅行先で作った海をモチーフにした白い写真立て。
織田の夢を叶える事を誰よりも強く望んだAが贈った最後の
「いつかあの続きを書き終えたら、必ず最初にお前に見せに来よう。まあ出来に関しては少し大目に見てくれると助かる」
煙草から一筋、薄紫色の煙が静かに立ち上っていた。それを織田は煙草を指に挟んで、少しの間見詰めていた。
やがて煙草は燃え尽き、煙は消えた。
「また来る」
そう告げ、懐から燐寸箱と煙草の箱を取り出し未だに残っている大きな血溜まりの跡の上に置くと舞踏室から立ち去った。
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黒龍(プロフ) - ハリネズミの毛玉さん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!皆様のお陰で完結する事が出来ました!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - ちょこれーとさん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!そう云って貰えると迚も嬉しい限りです!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミの毛玉(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: 9b2a72a438 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても面白い作品でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - マーシャさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います!不定期にはなりますが更新頑張ります!! (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2020年1月23日 2時