検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:60,700 hit

佰参拾漆 ページ9

足音が部屋のすぐ近くまで迫ってきた。
樫の扉が蹴破られる。


その瞬間を狙って、ジイドの手首を押し払った。
耳元で銃声が響き、火薬炎が頬の毛を焼いた。
だが弾は当たっていない。


私の銃弾も同じ動きで躱されていた。
ジイドと私の肘の内側が交差する。


異能力のおかげで、誰がここに突入してくるかは既に判っていた。
前方からマフィアの武装構成員。
後方からはミミック兵だ。


それは突入とほぼ同時だった。
私とジイドはお互いの腕をからめるように肘を曲げ、そのまま背後の敵を撃った(・・・・・・・・・・・・)



ミミック兵が銃弾を受けて吹き飛んだ。
後方ではマフィアも同じように撃たれているだろう。


ジイドの思考が見えた。
邪魔者である闖入者共から先に始末する。
私も同じ考えだった。


ジイドが私の襟を摑んで引いた。
私がジイドの襟を摑んで引いた。
互いを支点に半回転し、背後の敵に向き直った。
銃を撃つ。
ミミック兵が仰け反る。






そこは舞踏室だった。
中央には私達が居た。
空薬莢が床に落ち、拍手のような音を立てていた。


私達は互いを支点に敵を撃ち続けた。
背中を預け、眼前の敵を撃つ。


衣服をはためかせて回転し、互いの位置を入れ替える。
互いの肩に拳銃を載せて台座にし、敵を撃つ。


兵の鮮血が壁に散る。


肩と肩を交差し、回転しながら敵を撃っていく。
火薬の炎と空薬莢だけが私達の周囲で輝いた。




私とジイドは、限りなく死の淵に近い場所で共に踊っていた。
それはこの世のどこでもない場所だった。
異能と超能力が自動的に未来を読み、次にジイドが云う台詞を私の脳裏に刻みだした。




「どうだA」




私はそれを予見し、ジイドの言葉よりも前に返事をした。




『何がだ』




だが実際に私は何も云わなかった。
云うよりも前に、ジイドが私の言葉を予見し、更に返事をしたからだ。




「これが乃公の求めた世界だ……この世界に至る、それだけの為に生きてきた」




私達はお互い、一言も喋っていなかった。
ただ相手が何を云うかを異能で察知し、その前に返事の言葉を選んでいた。
思考した瞬間にそれは相手に届き、相手はその返事を思考した。




『何故求めた』


「お前は何故殺しを止めていた?」




それはほとんど時間の存在しない、永遠の一瞬だった。

佰参拾捌→←佰参拾陸



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (75 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
277人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

黒龍(プロフ) - ハリネズミの毛玉さん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!皆様のお陰で完結する事が出来ました!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - ちょこれーとさん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!そう云って貰えると迚も嬉しい限りです!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミの毛玉(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: 9b2a72a438 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても面白い作品でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - マーシャさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います!不定期にはなりますが更新頑張ります!! (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:黒龍 | 作成日時:2020年1月23日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。