参拾伍 ページ41
却説、電子遊技場から出た私は二人に適当に理由を付けて一度距離を置き、葬儀屋に連絡を取ってから遠くから二人を観察していた。
此処から二人は夫々別れて犯人の元へと向かうのだが……結局目星のついている、その犯人は同じなので合流する羽目になり、それから戦うとも葬儀屋から貰った資料に書いていた。
動き始めた二人を見ていると中也さんの方は異能を使用して空から探すのに対して、太宰さんは既に犯人と連絡を取ったのか端末を閉じる時にニヤリと笑っていた。
嗚呼、もう一時間も無いのか……
出来ない事だと頭では理解していても彼_蘭堂さんを助ける事が出来ないという事実が重く私に伸し掛る。
こんな気持ちになるならば近付き過ぎなければ佳かった。
無力な私をどうか許してくれ。
否、許さなくて善い、恨んでくれて善いからどうにか生かす事は出来ないのだろうか……なんて愚かな願いを胸の奥底に閉じ込めた。
私は所詮傍観者に過ぎない。
最初にたてた誓いを果たすのが私自身が決めた私に対する今の使命だ。
今行動を起こせば後の大勢の者達を助ける事が出来なくなってしまう。
全ての気持ちを吐き捨てる様に重々しい溜息を吐いてから港近くの倉庫へ向かう太宰さんの後を付けた。
*
現在葬儀屋と共に二階から蘭堂さん対二人の戦いを見守っている。
異能を使用して彼等には私達の姿を見えない様にしておいたので問題ない。
「菫ちゃん、大丈夫かィ?」
『ああ』
葬儀屋なりの優しさなのか何時もより落ち着いているので正直扶かった。
彼自身、魂を導かなければならない仕事を熟す運命にあるので、此処の誰よりも命の重みを知っているからこその態度なのかもしれないが……
「徐々決着が着く。小生は外の車で待ってるからちゃんと別れを告げてきなよ」
『……』
窓から飛び降りた葬儀屋を見送ってから戦っている彼等の方を見ると中也さんが蘭堂さんにトドメの一撃を食らわせている処だった。
流石はあの二人だ。
この短時間で異能力者での最高位に君臨する超越者級の一人を倒してしまうのだから。
薄らと目に浮かぶ生暖かい液体を流さない様に俯き、強く目を閉じた。
そして訴える様に前に伸ばした右手を、左手で胸元に引き寄せてグッと握り締める。
トドメの刺し方が小説版ではなくアニメ版だった事が未だ幸いだった。
『人の命っていうのは本当に呆気ないな』
ポツリと悔しそうに呟いたその言葉は誰にも聞かれる事は無かった。
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黒龍(プロフ) - 様々なオタクさん» もしやSAOの……?() (2021年6月12日 19時) (レス) id: b77228759e (このIDを非表示/違反報告)
様々なオタク - ヴァッサーゴ?!ヴァサゴ?!POH?! (2021年6月12日 18時) (レス) id: eccd7c5314 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - 布教する猫さん» コメントありがとうございます!更新に関しましては不定期になりますが頑張ります^^ (2021年1月16日 11時) (レス) id: b77228759e (このIDを非表示/違反報告)
布教する猫(プロフ) - すっっごく面白いです!!更新頑張って下さい!!(* ´ ▽ ` *) (2021年1月14日 20時) (レス) id: 0899319726 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - じしゃくさん» コメントありがとうございます!そして、そこに気付いて頂けて凄く嬉しいです……!! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2018年5月21日 1時