拾弐 ページ16
「矢張り君は優秀だね。まるで未来予知でもしたかの様に全てを理解している」
『御褒めに預かり光栄で御座います。ですが私にはその様な超人的能力など持ち合わせていません。あ、白衣はそこへ。替えの物を用意しているので其方をどうぞ。宜しければタオルもあります』
「用意周到だね、有難う」
森さん_首領に褒められるのは嬉しい。
……が、早く返り血を拭いて欲しい。
血が着いたままの笑顔なんて軽めの怪談だ。
椅子の方に予め持ってきていた首領用の替えの白衣を置いて作業を始めようと白いフォーマル手袋を外して代わりにゴム手袋を身につけ、テキパキと掃除を始めた。
しかし少ししてから先刻からずっと視線を感じていた方に顔を向ける。
黒い蓬髪に光を灯さない冷徹な目。
この部屋が暗いからこそ余計に目立つ右目や頸、腕等に巻かれている包帯。
間違いない、太宰 治だ。
『こうして目覚めた状態ではお初にお目にかかります、Aと申します。半年前、倒れていた私を見つけて下さり有難う御座いました。そして以後お見知り置きを、太宰さん』
「知ってたんだ、僕の事」
えぇ勿論と答えニッコリと微笑んだ。
太宰さんは探る様な視線を此方に向けていたが、やがて興味無さそうに窓の外へ視線を外した。
内心傷付いたが何時までも血腥い状態の部屋に居てもらうのも申し訳無く思い再び作業に戻った。
「森さん。今更だけど此の人『此の人ではありません、Aです』……Aさんに殺した事知られてよかったの?」
太宰さんは私の突っ込みに可也面倒臭そうな顔をしつつもちゃんと名前を云い直し、首領に問うた。
首領は白衣の袖に手を通しつつ机上にある資料を見ていたが太宰さんの方に顔を向け笑った。
「彼女は大丈夫だよ。何の心配も要らない」
「ふぅ〜ん。ま、別にどうでも善いけど」
首領は何処にそんな自信があるのだろうか?
若しや何時でも殺せるとか思っているのか。
そして太宰さんは問い掛けた割に本当にどうでも善さそうなので質問する意味とは……と考えてしまう。
要らぬ考えをしつつも手は動かす。
出来れば血が乾く前に全て拭き取りたい。
之だけ出血しているのでシーツ等は全て新しいのに取り替えて、壁は……根性だ。
「太宰君、少しの間此処で待っていてくれるかい?首領には色々とやらないといけない事があるからね」
「此の部屋で?血腥いのに」
「換気すれば大丈夫だよ。A君お願いね」
『承知しました』
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黒龍(プロフ) - 様々なオタクさん» もしやSAOの……?() (2021年6月12日 19時) (レス) id: b77228759e (このIDを非表示/違反報告)
様々なオタク - ヴァッサーゴ?!ヴァサゴ?!POH?! (2021年6月12日 18時) (レス) id: eccd7c5314 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - 布教する猫さん» コメントありがとうございます!更新に関しましては不定期になりますが頑張ります^^ (2021年1月16日 11時) (レス) id: b77228759e (このIDを非表示/違反報告)
布教する猫(プロフ) - すっっごく面白いです!!更新頑張って下さい!!(* ´ ▽ ` *) (2021年1月14日 20時) (レス) id: 0899319726 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - じしゃくさん» コメントありがとうございます!そして、そこに気付いて頂けて凄く嬉しいです……!! (2020年3月29日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2018年5月21日 1時